■ホッキョクグマ(Polar bear )

●体長:オス200~250cm、メス180~200cm ●体重:オス400~600kg、メス200~300kg
●分布エリア:ロシアのチュクチ海、北アメリカ大陸北部、ユーラシア大陸北部、北極圏
●エサ:主にアザラシ、クジラの死骸、腐肉、トナカイ、魚
●寿命:25年~30年
●学名:Ursus maritimus

 

ホッキョクグマの親子

ホッキョクグマの親子


ホッキョクグマは他のクマと異なり、長い首と体長に比べて小さな頭そして小さな耳が特徴です。 海に入り近くの陸や氷板から160km以上も泳ぐことができます。
ゆったりと大股で歩く時には首を蛇のように左右に揺らせます。脚先は大きく先端まで毛に覆われていますが、足裏はむき出しで速く移動するときや氷の上でも滑らずに面をしっかりととらえる事が出来ます。雪上の足跡を見ると、大きくて強い爪がある事が分かります。非常に大きな足は泳ぐときのオールの役目をします。また大きな足裏は、人間の体重も支えきれないほどの薄い氷の上を移動するときでも体重を分散させてくれます。

ホッキョクグマの遊泳

ホッキョクグマの遊泳

ホッキョクグマの分布は北極周辺全域です。極周辺地域ではホッキョクグマの群れが確認されています。スピッツベルゲン、フランツヨーゼフ諸島、西グリーンランド、ハドソン湾、高緯度カナダ北極、アラスカ東部北極、西アラスカ、東ロシアの各群れ間の混合も起きています。西アラスカ・東ロシアが最も大きく、雄は680kmにも達する事があります。北極点付近でも見られる事があります。

ホッキョクグマは海洋生物が乏しい北極海盆の中央部よりは流氷群や近辺に多く見られ、流氷群の南端部に行くほど数が増します。ホッキョクグマは後退する流氷群と共に移動し、アザラシや狩りに丁度良い氷の状態の場所に多く見られます。主な獲物は北極アザラシの中で最も多いワモンアザラシですが、西北極海域ではアゴヒゲアザラシの方を多く獲るかもしれません。さらに、セイウチ、座礁したクジラ、鳥、魚、そして夏の陸上では植物なども食べますし、共食いも稀ではありません。通常単独で狩りをしながら非常に広い範囲を移動し、学習が早く、力・スピード、強い忍耐力を兼ね備えています。ある試算によれば、ホッキョクグマは6日半毎にワモンアザラシ一頭ほどのカロリーを必要としているとの事です。

冬にはアザラシを氷の中の呼吸孔で捕まえます。呼吸孔はアザラシが爪を使って下から開けておくものです。ホッキョクグマはわずかな臭いを嗅ぎ分けて近づき、穴の周りの雪を静かに払いのけてすぐそばにうずくまって、アザラシが頭を出すのを待ちます。アザラシが水面に上がって来るなり大きな前足の一撃で氷を割ってアザラシを殺して氷上に引き上げます。春には氷上で休むアザラシにそっと忍び寄ります。アザラシが眠ったり起きたりする周期的な動きに合わせて近づき、獲物が氷穴から海に逃げ込む前に襲い掛かります。

ホッキョクグマ

アザラシを仕留めるホッキョクグマ

夏になって海氷が割れるとハドソン湾の氷クマ(Ice bears)は陸グマ(Shore bears)になります。雌は森林境界線沿いの荒野に退いて湖近くのピートの土手に巣穴を掘ります。ハドソン湾近辺のクマの巣穴地域は南のジェームス湾から北はチャーチルの南50kmほどの所まで及びます。雄は餌を求めてさまよい歩きごみ置き場まで来るので迷惑であると共に観光客用の呼び物となっています。

獲物が一年中あるので、ホッキョクグマはヒグマのような冬眠はしません。妊娠中の雌は例外で、約5ヶ月巣穴で過ごす間に子を産みます。雌は首尾よい妊娠期間と出産に先だって大きく体重(特に脂肪)を増やさなければなりません。12月か1月に各500g程度の小熊2頭を産みます。3~4月頃巣穴から出てきたときには小グマの体重は10kg程度もあります。小グマは普通2年半位の間、母グマと共に過ごすので、雌は3年に一度の出産となります。この繁殖率の低さは長い寿命と自然死亡率の低さで均衡が取れています。

ホッキョクグマ

ホッキョクグマが北極地方の狩猟や開発の影響を受けやすい事についての懸念が大きくなった事や、信頼できる個体数調査が無かったこともあり、1968年に会議が招集され、ソ連、カナダ、米国、デンマーク(グリーンランド代表)、ノルウェーの北極関係5ヶ国のホッキョクグマ専門家達が出席しました。その後1976年には「ホッキョクグマの保護に関する国際協定」がこれら各国で批准されました。この協定では生息環境の保護が必要とされましたが、クマが移動性であり生息地が主として海氷上であるために難しい問題を抱えていました。科学者達の最大関心事は「豊かなポリニヤ が資源開発の過程で人間用に益々利用されるようになり、クマの生息する場所がいっそう少なくなるのではないか」という事で、営巣地域を保護する事も同じくきわめて重要なのです。人間の営みによってホッキョクグマがその巣を放棄し、その結果妊娠できなくなったり、子グマが死んだりする事もあり得るのです。しかし、ホッキョクグマが直面している問題は気候変化です。北極の海氷が融けてアザラシ猟のための足場がなくなってしまう事で、海氷は彼らの生存にとって不可欠なのです。