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南極クルーズ・北極クルーズの手引き

北極植物相の歴史

北極ツンドラは世界でも最近に進化した生物群の一つです。
北部シベリアはもちろん、カナダ北極群島や北部グリーンランドと言った最北西地域には約1,000万年前の中新世後期に森林ツンドラの植生が存在していた兆候があります。当時、これら2つの主要地域は北極の周りに連続体を形成していたわけではなく、今日の北極および亜北極地域に広がる森林によって隔てられていました。

当時の気候は今より温暖で、温帯の硬材種(カシ、カエデ、マホガニーなど)が高緯度でも成長できました。
森林地帯周辺部にあった初期の森林ツンドラはおそらく連続的な森林より北方の地域や標高のある高原地域で生じ、寒冷・乾燥状態によく耐える森林植物であったと考えられます。

気候が悪化した時期の鮮新世後期(約300万年前)になってようやく、高緯度にあった森林ツンドラ群落地域が拡大して極周辺のツンドラ地帯を形成したものと思われます。約200万年前に始まった更新世紀には、世界的規模の大氷河期となり、北極周辺にバラバラの退避地 と呼ばれる植物が絶滅を免れた地域が点在しているだけの状態となりました。

氷河期には、地表の30%も氷と永久雪原に覆われていました。北米ではわずか14,000年前に最後の氷河期が終わったばかりです。
氷河作用最盛期にはカナダのほとんどと米国北部は氷で覆われていました。
しかし、ヨーロッパの氷河作用は北米ほど広範囲ではなく、連続氷原のほとんどはヨーロッパ北部と北西シベリアに限られていました。

氷河の形跡や動植物分布状態から、最後の氷河作用最盛期にもある程度の地域は凍結しなかったに違いありません。
これらの場所は北極種のための退避地を提供しました。北極種のための最大・最重要な退避地はアラスカ、ユーコン準州の内陸一帯と東シベリアと両大陸の間のベーリンジア でした。

ベーリンジアは氷河が前進し海水面が100㍍以上低下するにつれて露出したもので、乾季には動植物が分布してゆく回廊地帯となりました。
これが最後に起こったのは約10,000年前です。
ベーリンジアの植生は主としてイネ科植物、ヨモギ、そして所々で見かけるポプラの森からなるステップ式ツンドラでした。
この他、野生動物ではバイソン、ウマ、マンモスの大群がなだらかな起伏地帯を歩き回っていました。実際の所、種の移動はたいてい東に向かって起こり、東部ベーリンジアは本質的には北東アジアの生物学的延長となっていました。
人類も動物を追って東へ移動しました。

今日みられる北極の植物相は、氷河に覆われていない退避地で生き延びた種による近年の移動の結果と考えられます。
この植生は氷前線の南方にあった大陸地域からやって来て新たに露出した陸地(その多くが数千年間も凍結したことが無い)に定着しました。
今日、北極の植物群に見られる多様性は、地域的環境の多様性を表しているだけでなく退避地における種の構成、拡散、および定着に要した時間を大きく反映しています。

(北極旅行&北極クルーズ6-11)