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南極クルーズ・北極クルーズの手引き

氷河学

湾の奥はどこまでも続く巨大な雪と氷の塊で突き当りとなっている。かなりの高さの垂直の壁である。北極の氷島の側面の様だ。そこから常に崩落する氷が海に漂い出ている。

ジェームス・クック船長1777

サウスジョージアに氷河が形成されたのは約5百万年前で、2万年位前には大きな氷冠が島全体を覆い、さらに現在の海岸線を優に超えて伸び、山の頂上部分がかろうじて氷の上に出ている有様でした。
それ以来氷河は徐々に後退し、現在は約160の谷を埋める氷河となっていますが、その間にも前進と後退を何度か繰り返しました。
大きな湾は氷河が深い谷を削り取ってできたものです。

現在、サウスジョージアの面積(3,755㎢)の半分は氷河と万年雪に覆われています。雪線は、島の北側で海抜450~600mですが、より冷たい南側では300mまで下がります。山脈は氷原や谷間まで続く大きな氷河に囲まれており氷河の先端が大きな氷壁となって湾内に落ち込んでいる所もあります。島の南側は積雪量が多いため氷河は成長しています。氷河の多くはクレバスが多く急斜面を氷瀑となって転がり落ちています。
氷河先端部分が海に出会うと崩落が起き、氷山や氷塊を生み出しています。

クック船長が訪れた1775年は17世紀から19世紀まで続いた小氷河期と言われる頃でした。世界の気温は相当低く、サウスジョージアの氷河も現在より発達していたと考えられます。クック船長が「サウスジョージアは永久に凍った世界だ。
太陽の暖かさを全く感じない、この恐ろしく過酷な世界を表す言葉が見あたらない。」と書いたのもうなずけます。

1880年以後、天候が好転し氷河も後退し始めました。
気象記録によるとサウスジョージアの天気は20世紀初頭には温和でしたが、1920年台から40年代にかけて冷え込みました。
これは1925年から1935年にかけて一時的に氷河が前進した事に関係しています。
後退が再び始まったのは1950年台で、写真記録および人工衛星からの映像によると、1990年から氷河後退が加速しています。
ごく少数の例外(フォーツナ氷河は数メートル前進、)を除いてほとんどが後退しています。三分の二の氷河は最高500mも後退し、いくつかはもっと後退しています。
後退が顕著なのは比較的暖かい、島の北東部側です。壮大なノイマイヤー氷河(長さ15㎞幅1.5㎞)は1955年以来4.5㎞も後退しており、後退する速度も年間8mから400mに速まっています。
グリトヴィケンの上にある小さなホッジ氷河は完全に消失してしまいました。

サウスジョージアの地形は氷河終堆積、丸い小山そして、氷河が削り取って後退した後に現れた、谷にできたすくい取ったような湖などに見られるように氷河作用によって作られたものです。氷河後退の様子は氷河に面した側の岩が露出していて、まだ植物が群生する程に時間が経っていない、例えばゴールド・ハーバーなどに顕著です。

氷が融けて重さがなくなり島が水面から隆起して、海岸段丘が現在の海岸線の上に見られます。このような隆起した浜辺や氷河の扇状氷堆石などは湾やフィヨルドの奥に広がり、キングペンギンの繁殖や捕鯨基地用地に丁度良い平地となりました。

(南極旅行/サウスジョージア島6)