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南極クルーズ・北極クルーズの手引き

風と雲

サウスジョージアの天気は風に左右されます。スコシア海をさっと吹き抜ける風が、暴風雨級の風、低い雲そして雨や雪をもたらすのと共に、強い風の通り道に直角に位置している島の山脈は地域的な風も生み出して天気に大きな影響を与えます。

氷河や雪に覆われた山肌に接触した風は冷やされて密度が上がり、重力により斜面に沿ってゆっくりと滑り降ります。これはカタバ風または斜面滑降風と呼ばれます。
滑り降りるにつれて温められて雲になる水滴も蒸発してしまいます。
そして、この乾燥した風は海起源の湿った雲や霧峰を数海里も沖合まで押しやってしまい、良い天気を海岸線沿いにもたらします。
一般常識に反して、ここのカタバ風は通常秒速10m以上になる事はありません。
極地に関する本などに出ている極端なカタバ風は、南極大陸の氷床高原からの冷えた風が谷あいに注ぎ込まれて増幅されたときに起きるのです。
サウスジョージアの南東側はよくフェーン風に吹かれます。
これは西風が部分的に山脈で遮られたときに起きます。
山脈山頂部分より下の海を渡る風は山に遮られて島を迂回しますが、風の一部は山頂を超えて風下の斜面を落ちます。下に行くにつれて空気はかなり温められます。

海水面で10℃の上昇は10分ほどで起き、急激に雪を融かします。フェーン風は暖かく乾いた空気に感じられます。
多くは空気中の波と共に山頂に綿帽子のような雲をかぶせて山肌に流れ落ちます。

サウスジョージアは前触れなく強い突風が山肌を吹き抜ける事で知られており、陸上でも海上でも危険が伴います。1927年に英国観測船ディスカバリー号がハリケーン級の風に吹かれて降ろしていた錨もろともカンバーランド湾外に押し出されてしまった事がありました。その時、沖合10海里ではほとんど凪の状態でした。
これらの、山から海へ吹き降ろす突風は、フェーン風の波によって引き起こされた下降風の残りと考えられます。岸に打ち寄せる波のように、この突風も旋風を陸地にたたきつけます。気象記録計が秒速51m以上を記録したこともあります。
風下にあるグリトヴィケンでさえ、一瞬のうちに秒速40mになる事もあります。

何枚も重ねたようなレンズ雲はこのような空気の流れをはっきり表しています。
島を横断した風は100㎞も沖合の波を荒立てるように激しく上下します。
空気が上昇するにつれて水蒸気は凝縮されて雲となりますが、空気が下降しているさざ波の向こう側では消えてなくなります。
その結果、お皿を重ねたように何枚もの固定された雲が一列に並びます。

(南極旅行/サウスジョージア島7-1)