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南極クルーズ・北極クルーズの手引き

氷山、氷河、海氷

氷山、氷河、海氷(Icebergs、 Glaciers and Sea Ice)
海水は塩分濃度にもよりますが大体約-1.8℃で凍ります。塩分が多いと結氷点は低くなります。面白い事に海が穏やかな時にゆっくり形成された表面の氷は普通塩気がありません。液体中の塩の分子は氷の結晶が作られるとき残りの液体中に濃縮され残る傾向があります。南極大陸周辺の海は、冬になると毎年厚さ1~3m の氷が形成され100~200㎞沖まで広がって沖まで広がってゆきます。表面が冷やされて結氷温度まで下がると氷の結晶が出来始めます。気候が穏やかなら結晶はそれぞれくっついて厚くなり軟氷またはフラジル(frazil=氷晶)と呼ばれる繊維質の構造を持つ氷が形成されます。軟氷は頻繁に波のうねりにより細かく砕けて互いにぶつかり合い、こすりあいます。この働きで「蓮(はす)葉氷=pancake ice」と呼ばれる端がめくれあがったほぼ円形をした薄い氷が形成されます。時間がたち気温が低いままであれば、更に多くの結晶が作られその蓮葉氷はやがて互いに氷結しあい、厚さ数センチの固い層になります。低気温が続けばこの層は海岸に凍りつき「定着氷= first ice」となります。定着氷及び流氷は通常一冬の間そのままの形を保ちます。海流や嵐、潮流で定着氷が曲げらりたり、割れたりすると海面に開水域が出来て、ペンギンやミズナギドリ、アザラシ、クジラなどが海の上に出たり、呼吸したり出来る場所となります。

流氷/パックアイス(Pack Ice)
定着氷は夏の間割れて浮き氷を作り、これが海流に押し流されると、積み重なり流氷パックアイスとして広大な地域を覆います。風や波でパックアイスが分散すると、ポリニヤと呼ばれる開水域が沖合いに出来ます。大陸の近くではパックアイスは西の方向に浮流しますが、さらに沖合では東へ流れます。パックアイスが出来る海域を予想するのは困難ですが、通常、ウェッデル海、ロス海、更に小南極の太平洋海域の沖合いに集中して見られます。パックアイスの北限は変化しますが、冬や初春には海岸から800㎞程度まで延びている所もあります。この時期パックアイスはおよそ1,900万平方㎞の広さに及びますが、夏の終わりの3月までには波、海流、氷の融解によって再び僅か400万平方㎞程度に縮小します。この広大な季節周期作用により南極大陸の海床面積は冬場にはなんと1,800万平方㎞から3,400万平方㎞へと倍に広がります。太陽の放射エネルギーがパックアイスに当って反射する量が増え、逆に海水に吸収される量は減って、地球全体の気候に多大な影響を及ぼします。

秋と冬(2月~9月)に海氷がつくりだされる速度は夏の減少期(10月~1月)よりはるかにゆるやかです。英国の生化学者リチャード・ローズ博士によれば「海氷中に見られる発色した藻の層が夏には太陽の放射を吸収して、海氷の消失を加速しているかもしれない」との事です。もしそうであれば、微生物の形成が世界の気候に影響を及ぼす顕著な例となります。春が寒い季節には定着氷が1年以上も残っている地域もあります。これは湾氷と呼ばれ、棚氷と連結する事もあります。棚氷はの雪の蓄積により育った氷床が海に向かって流れ、先端が海に浮いているものです。小形の棚氷は、50~300mの厚さがあり、ロス棚氷の南端部分では、1,000mの厚さになります。棚氷の海側先端をアイス・フロントと言います。

卓状氷山(Tabular Icebergs)
棚氷の前面から欠け落ちた天辺が平らな氷の塊を一般的に卓状(テーブル型)氷山と呼び、実際驚くほど巨大なものがあります。卓状氷山は生まれた場所から遠くに漂ってゆき溶解するか、分解するまで長いものだと10年以上も浮いているものもあります。記録上最大の氷山は2000年3月にロス棚氷から分離したもので、当初、全長286㎞、幅40㎞ほどの巨大なものでした。面積でいえば1万800平方kmにものぼったのです。その氷山は後にいくつかに分解しましたが、それでも数ヶ月は巨大な形のまま浮遊し、西の方角に流れてゆきましたが、一部は6年後もまだロス海に浮いており、船の航行の障害になりました。

これら巨大な氷山はおおむね、スペインより大きなロス棚氷や、ウェッデル海に氷を吐き出しているフィルヒナー棚氷のような大規模な棚氷から生まれます。ウェッデル海の氷山の多くは最初、東風海流に、後には西風周極海流に乗ってほとんどがサウスジョージア島の方向に移動していきます。他にウェッデル海の西側では、北西の方に押しやられアンタークティック海峡(南極半島北端)を通り抜けてゆくものがあります。この様な理由からアンタークティック海峡は「氷山銀座」のニックネームがつけられています。

小型氷山(Smaller Icebergs)
南極の氷山(iceberg、 “berg”はスカンジナビア語およびドイツ語でゆ「山」を表す)全てが卓状氷山の様に大きいものとは限りません。もっと小型の氷山が沢山あります。氷山というのは単に大小を問わず氷床、棚氷、氷河、浮氷から「分離」した海に浮いている氷片を示すものです。しかし、定義上氷山と呼べるものは面積が100平方m以上あって5m以上海面上に出ているものと考えられています。これより小さな塊は“氷山片”と呼ばれています。

殆どの氷山は、上に載っている雪の深さなどによりその体積の7分の1から4分の1しか水面に姿を見せていません。ある氷山の履歴(歴史)は、その色(年齢、密度、氷の空気含有量に左右される)により押測ることができます。時にはさまざまな高さに刻まれた水平もしくは斜めの水位線から、氷山が溶けて、重心を調整する為に傾いた位置を知ることができます。

動物と氷(Animals and Ice)
南極のほとんどの動物たちが海氷との生活に適応しています。カニクイアザラシやロスアザラシはパックアイスの上もしくはその周辺だけに棲んでいますし、ヒョウアザラシやウェッデルアザラシはよく海岸でも過しますが、やはり一年の大半を氷に依存して生活しています。コウテイペンギンは、冬場に海氷上で繁殖するので、氷が充分固くなると(4月)すぐさまコロニーを形成します。その他の種類のペンギンたちはすべて夏の間に陸上で繁殖しますが、それ以外の季節はパックアイスの縁周辺に棲息するので餌場の範囲は大きく広がります。

他の多くの海鳥は氷を餌場や狩の基地として利用しています。一方で、海氷の存在は浅い沿岸海域や潮間地帯で、動植物が住み着くのを難しくしています。藻、海草、海虫、海綿、ヒトデ、クモヒトデ、ウニなどは海氷が海底を削り取らない大陸棚で繁殖しています。海氷があるため、海岸が海水で極端に暖められる事がありません。冬のパックアイスの限界域内の島(サウスシェトランド諸島、サウスオークニー諸島など)が気温による変化、土壌の特質、動植物相に於いて南極大陸に酷似している点は注目すべきものです。パックアイス海域の外側にある島(サウスジョージア島、マッコーリー島など)は永久開水域があり、冬も穏やかで生物の成長期間も長く、より多様化して発達した植物相があり、さらに大きく異なった動物相が見られます。

南極の氷床(The Antarctic Ice Sheet)
地球の歴史の大部分を通じ、極地、温帯、熱帯といった異なる気候帯の間で、今日ほど際立った相違があった時代は過去に例をみなかったばかりか、古代、両極地には万年氷がありませんでした。それでも両極地は常に低い角度で太陽の放射エネルギーを受けてきたため、熱帯地方より涼しかったのです。それならなぜ今日、これほどまでに大きな違いが生じたのでしょうか。

氷床は地球が徐々に冷えてゆく長い期間の後に発達しました。この冷却は1億5,000万年ほど前に始まり約300万年前まで続きました。科学者たちはこの期間に平均地表気温が約20℃から10℃に落ち込んだものと判断しています。この気温の落ち込みは恐らく陸塊の分布と極域の海水域が変化して起こったと考えられます。

極地の構成はこの2億年ですっかり変わりました。というのは大陸間の相対的位置がプレートテクトニクス(地質構造作用)によって変わってしまったからです。科学者たちは、極地に、万年氷ができるほど極寒になったのは大陸の陸塊ないし陸に閉じ込められた海で極地の海流の移動が中断させられてからのことだと考えています。両極が海上にあった頃にある間は主だった海流は比較的暖かい海水を低緯度から高緯度へ運び、季節的な海氷はそれが永久海氷となる間もないうちに散乱させられていたに違いありません。

今日北極点は北極海に位置していて、北極海は北米大陸やユーラシア大陸に取り巻かれ、暖かい海流とほとんど混じりあわない為、年間を通じて海氷が存在しています。南極点は南極大陸内に位置しているため暖かい海水を寄せ付けないだけでなく、大陸の標高が高い事が万年氷の形成を更に促進しているのです。この現象は今後も無限に継続する可能性があります。雪原と海氷の輝く白い表面が太陽放射をはね返し、通常の季節による温暖化を妨げているからです。実際、真夏のごく短期間を除いて、南極大陸の中心部は太陽から受ける熱よりも多くの熱を放射しています。

南極の氷河(Antarctc Glaciers)
地質学的証拠によると、つい500~600万年前位まで南極地方では温帯性気候が続いていたのですが、400万年前位までには最初の南極氷河が海岸線に到達して氷山を生産し始めました。これが大陸周辺に広がり現在の南極氷河時代が始まったのです。

南極氷床が形成された影響は世界中に及ぼされましたが、興味深いのは北半球の氷河時代は少し遅れて始まり(200~300万年前)そのとき万年氷が中央ヨーロッパやアジア、北アメリカ、グリーンランド、アイスランドの山々を覆ったのです。これらの氷冠は北半球ではここ百万年の間に変動しましたが、南極氷床は比較的安定しています。しかし氷河のモレーン(堆積)と今や氷の表面より高くなっているい山の頂上に見られる氷河の擦痕によって証明される様に、南極の氷床にも小さな変化が起こっています。大陸のほとんどが海底のモレーンの尾根によって沖合い100~300㎞の所、深さ500mで取り囲まれていますが、以前はそこまで南極氷床の際があったことを示しています。

未だに続く氷河時代(Still in an ice Age)
おそらく広大な氷床が僅かな気候変動によって起こる変化を防いでいたのでしょうが、北半球での氷河作用によって引き起こされた世界の海水位の変動は南極大陸の海岸線を上げたり、下げたりし、その結果、氷床の大きさが変化したものと思われます。北半球の氷床は約二万年前に後退し始め、それ以後、現在はツンドラやタイガ針葉樹林帯で覆われている広大な陸地の氷の覆いが剥がされたのです。一方、南極大陸は未だに氷河時代に閉じ込められたままになっています。

南極の氷床は世界の陸氷の約90%を占めますが、これは地球上の淡水の約70%になります。これはおよそ3,000万立方㎞となり、年に2,000立方㎞の新しい雪と氷とを受け入れているものと推定されます。しかし雪融け、昇華、海へと吹き飛ばされる雪、そして氷棚や氷河から分離し海に浮流する氷など様々な理由で、受け入れているのと同じ位の量の氷を失っているのです。他に氷床と呼ばれるのは、グリーンランドで世界の氷の9%を占めます。残りの1%は海氷で、南・北極合わせても僅かな量です。

(南極旅行&南極クルーズ5-5)