日食という現象は、太陽と月と地球が一直線上に並んだ時に、月が太陽を隠すことで起こる現象であることは、学校でも習うので皆さんご存じだと思います。しかし、新月の頃には太陽と月と地球が一直線に並びますが、日食が起こるとは限りません。新月のたびに日食が起こらない理由は、図6のように地球から見た月の通り道(白道)が太陽の通り道(黄道)に対して約5度傾いているためで、日食が起こる頻度は平均的には年に2回ぐらいの頻度です。

 

図6 新月のたびに日食が起こるとは限らないことの説明図

 日食には、月と太陽のみかけの中心がずれていて部分的にしか隠さない部分食と、中心が一致して月と太陽が完全に重なる皆既食と金環食があります。地球から眺めた太陽と月の大きさは、どちらもみかけの直径約0.5度ですが、太陽と地球の距離は年間に3.5%ぐらい変化し、月と地球の距離は1.2%ぐらい変化するので、月が近くて太陽が遠い時は月が完全に太陽を隠す皆既日食になり、月が遠くて太陽が近い時は月が太陽を完全には隠しきれない金環日食になります。

 皆既日食では月が太陽を完全に隠すので、太陽の周りの淡い光芒であるコロナや、昼間なのに空が暗くなり地平線付近が360度の夕焼けのようになる様子を見ることができますが、月が隠し切れない太陽がリング状に残る金環食では、リング状の太陽の光が強すぎてコロナや夕焼けは見えません。従って、皆既日食の方が金環日食より、はるかに見どころが多い現象だと言えます。

 ところで、1回の皆既日食で皆既になる地域はどれぐらいの広さかというと、地球全体の1/200程度の範囲に過ぎません。そのため、住んでいる場所で居ながらにして見られるチャンスは稀で、平均的には350年に1回と言われています。つまり、たまたま生きている間に皆既日食が起こる場所に住んでいない限り、皆既日食を眺めるためには、皆既日食が起こるときにその場所に出かけていく必要があるわけです。(日本で次に皆既日食が見られるのは、2035年9月2日で、能登半島から水戸にかけての幅100km強の範囲です。)

 

文責:日食画像研究会(SEPnet)前代表 塩田 和生

 

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