南極・北極旅行&クルーズ 株式会社クルーズライフ

みんなの探検旅行~ブログ~
2019.08.15

【スタッフレポート】2019年6月 北緯90度 北極点到達の船旅

クルーズライフの「日本人通訳兼ナチュラリストガイド」として乗船した保阪瑠璃子さんより2019年6月23日~7月6日、砕氷船利用の北極点への船旅のレポートをご紹介します。

 


6月24日(月) ムルマンスク(北緯68度58分 東経33度5分 18℃)

世界各国から集合したお客様と共にヘルシンキ空港内のヒルトンホテルで一泊した後、チャーター便で約1時間半、北極圏内最大の町ムルマンスクに着きました。市内のホテルで昼食とフィヨルドに沿った細長い坂の町ムルマンスク市内観光と初代原子力砕氷船レーニンを見学し、いよいよ「50イヤーズオブヴィクトリー号」に乗船です。船内ではウェルカムブリーフィングとパルカ、ブーツの配布が行われ、18:00頃、満潮に乗って出港しました。16ヶ国から計113名の乗客仲間と共に北極点まで約2,330㎞の旅の始まりです。

 

 

 

 

 


6月25日(火) バレンツ海を北上中 4℃ 正午の位置:北緯73度16分 東経37度18分

良い天気の静かなバレンツ海を17~18ノットで北上中です。

北極講座「北極の鳥たち」「北極解明の歴史」を聞き、さらに避難訓練と環境にやさしい北極観光の諸注意、そしてエンジンルームツアーや船長とのウェルカムカクテル、ヘリコプター遊覧などのための言語別アクティビティグループ分けを行いました。

毎日夕食前に行われる今日のまとめ(リキャップ)で解説された海氷密接度の地図を見て、今年の北極海の氷は近年になく多いことを知りました。6月初旬にスピッツベルゲン島で押し寄せる氷が今年は厳しいと聞いたことが現実になりました。午後には流氷群の南端が見えてきました。

 


6月26日(水) フランツヨーゼフランドを通過 -1℃ 正午の位置:北緯79度50分、東経49度12分

午前は、ヘリコプターの安全ブリーフィングと北極講座「デジタルカメラの基礎」。

午後、フランツヨーゼフ諸島南端から張り出した流氷群に差し掛かると空に舞うゾウゲカモメやミツユビカモメに加え、数十頭のセイウチの群れがいくつかの流氷上に押し合いへし合い乗っているのが見えました。しかも1か月位前に生まれたばかりの子供も混じっているではありませんか!普段ノースブルック島のフローラ岬北側にいる群れかもしれません。さらに進んで定着氷に入ると、2年目の子熊2頭を連れた母熊(#1、2、3)、さらに1頭づつ3頭(#4、5、6)のホッキョクグマが次々と姿を現しました。いずれも大変健康そうです。やはりホッキョクグマは氷上でまるまる太っているのが一番です。

 

     

 

夕食中にロシア北極国立公園のレンジャー10名と物資をフッカー島のティカヤブクタ基地に送り届け、さらに北に向かいました。

 


6月27日(木) 北極点に向けて北上中 +2℃ 正午の位置:北緯83度27.8分 東経67度38.8分

今日のモーニングコールはホッキョクグマの発見のアナウンスでした。

もう開水面がほとんど無い中を進んでいます。

北極講座「北極の海氷」「フランツヨーゼフランド発見史」「北極海食物連鎖の頂点:ホッキョクグマ」「砕氷船のメカニズム」。

昼食前には船長のサロンでカクテルと写真タイム。

夕刻にはもう1頭のホッキョクグマが出現しました。

船体にあたる氷がより硬くなってきたように思われます。夕刻、今まで強風のために運行できなかった待望のヘリコプター遊覧が始まり、氷原を雪煙を上げながら進む頼もしい50イヤーズオブヴィクトリー号の写真が撮れました。船内では北極点到達日時予想あてコンテストの応募が正午に締め切られました。

 

   

 

 


6月28日(金) 北極海を北上中 濃霧+1℃ 正午の位置:北緯87度28分 東経72度32分 

大陸棚を越えて深い北極海盆に出たようです。

北極講座「海氷のエコロジー」「熱気球の安全ブリーフィング」「北極点初到達競争」「カメラ講座:写真に人は必要か」。

50イヤーズオブヴィクトリー号の速度が昨日までは約16ノットでしたが、10ノット(時速18.52㎞)に落ちてきました。全く開水面が無く、厚さ3m以上となる多年氷(3年以上の古い海氷)が重なり合って凍結した氷丘脈に差し掛かると、一旦船の長さ程後退した後、全速で氷に突進するラミング(Ramming)を何度も繰り返すからでした。特に最後の緯度1度分の60海里(111.12㎞)はいつも厳しく、とても長く感じます。リキャップでエクスペディションリーダーから、極点到達は明日になると聞きました。

 

 

 


6月29日(土) 北極点到達!19:30 うす曇り 微風+1℃ 正午の位置:89度39分 東経62度17分

船の速度がさらに落ちて3~5ノット(時速5.5~9.2㎞)となっています。おそらく深度3,000mを越えている不毛の北極海では珍しくアザラシが1頭顔を出しました。

北極講座「カメラ講座:構図」「北極資源開発」「北極の鰭脚類:セイウチとアザラシ」「北極海の地質学的構成」。

夕方になり、極点手前5海里(9.26㎞)からカウントダウンが始まりました。私たちはそれぞれの国の小さな国旗や小型GPSを手に前甲板に集まりました。そしてついに19:30、操舵室のGPSが90.0000Nを指して汽笛が鳴らされました!!

自分のGPSを眺めてにんまりされる方、あと数秒の数字を求めて歩き回る方など様々です。

GPS画面の数字はアンテナが直径約2m位の範囲に入らないと90.0000Nとならないので大きな船では場所により数字が異なるのです。早速エクスペディションリーダーのスピーチとシャンペンで乾杯をしました。

その後、北上中に見つけて置いた大きくて丈夫そうな氷板の上に私たちも降り立ちました。極点印を中心に円陣を組み記念撮影や船長のスピーチ、自宅へ2分間の衛星電話、極点飛び込み大会(水温0.5℃に36名参加!)、熱気球(有料48名)、ミニハイキングなどの行事を白夜の中、翌朝03:00までかかって行いました。

本砕氷船にとって50航海目の北極点到達であり、ルブソフ船長にとって25回目の北極点となりました。

 

    

 


6月30日(日) 南へ向かって 快晴0℃ 正午の位置:北緯89度15分 東経53度26分

今朝03:00迄かかって行われた極点行事は無事終了し、南に向かいました。

午前中は休養を兼ねて、極点に挑んだ歴史上の探検家の話を言語別のDVDで楽しみました。

第2回目のヘリ遊覧も断続的に行われました。

北極講座「海氷の減少が生態系に与える影響」「北極氷床と氷河の異変」。

船内は本航海の最大の目的を果たした後なので、絵葉書を書く人、日記を記す方など皆リラックスしていました。

ほぼ北上した際の航路をたどるので南下の速度は16ノットに上がっています。夕食は極点到達を祝ってガラディナーが振る舞われました。

 


7月1日(月) 南下中 +1℃ 正午の位置:北緯85度10分 東経71度7分

北極講座「ゾディアック・ヘリコプターによる上陸諸注意」「カメラ講座:写真の整理と編集」「北極のクジラ類」「フランツヨーゼフ諸島」。

午前中に氷の割れ目から顔を出すアザラシを期待して待つホッキョクグマ、そして夜中過ぎ01:00頃母親と子グマ2頭が現れました。

操舵室にあるノートには克明な動物観察記録が残されています。

 

  

 


7月2日(火) フランツヨーゼフランド 快晴0℃ 正午の位置:北緯81度9分 東経54度54分

早朝、ユーラシア大陸側の北端であり、フランツヨーゼフランドの北端、ルドルフ島に達しました。島の北端のフリゲリー岬には航行用の目印とロシア聖教の十字架が建てられ、ここから北極点を目指した多くの探検家達を慰霊しています。

フリチョフ・ナンセン等が越冬したノルウェー岬(ジャクソン島)は60ノットの強風のため通過し、午後のティカヤ・ブクタ(フッカー島)に上陸しました。往路に下船したロシア国立公園管理局員たちが雪かきをしてくれて、木道に沿って基地内を見て回りました。第二次大戦中から1960年代初頭まで使われた基地背後の斜面はヒメウミスズメが営巣しています。基地には宿泊棟の他、単発飛行機格納車、雪上車、風力発電、犬ぞり、磁気観測棟などが今も残り、美しい湾内の奥にはセドフ氷河と大きな玄武岩の断崖、ルビニロックで営巣する6万つがいと言われるハシブトウミガラスとミツユビカモメがいます。臨時の売店と郵便局も利用できました。

夕方から深夜にかけて3回目のヘリコプター遊覧が行われ、氷河の上流や島の内陸まで見る事が出来ました。

その後、バレンツ海を南下し始めました。

 

  

 


7月3日(水) バレンツ海を南下中 曇り+3℃ 正午の位置:北緯77度59分 東経48度48分

北極講座「極地の動物の環境適応」「Thin Ice」「ロシア北極国立公園管理官指導によるシロクマ工作教室」。

17:25頃、バレンツ海真っただ中(北緯76度48分、東経48度48分)で思いがけず大きな流氷群の中にいるホッキョクグマ発見!太って健康そうでしたが、このままどこへ行くのでしょうか。どこから来たのでしょうか。フランツヨーゼフ諸島とスヴァールバル諸島を行き来するホッキョクグマの存在はかねてより聞いてはいましたが、その場の海流は南西に向かっていたのでうまくスピッツベルゲン島の南端に接近する辺りまで氷が融けずにいてくれるのを願わずにはいられませんでした。

17:30 ホッキョクグマ保護団体寄付のためのオークション。

今日の夕食はロシア風メニューでウエイトレスが民族衣装を着てキャビアとウォッカで出迎えてくれ、和気あいあいとした楽しい夕食でした。

 

 


7月4日(木) バレンツ海を南下中 濃霧+5℃ 正午の位置:北緯72度22分 東経56度26分

北極講座「北極の国境紛争地域と難問」「北極大変動 DVD」「Quark社の他の旅行紹介」。

乗船していたロシア国立北極研究所の海氷専門家によれば、今回の海氷は前便よりも厳しかったとの事。(私たちが通過した海域の多年氷と1年氷の比率が前便では30:60だったが、今回は60:30だった。海流により海氷も常に動いているので時期の早い方が厳しいとも言えない)

ラミングは計13回で、全くラミング無しの年に比較してさぞかし燃料消費も多かったことでしょう。

いよいよムルマンスク下船に向けた準備が始まりました。

船長主催さよならカクテルでは、オフィサーとエクスペディションチームに向けてお客様から自然発生的に拍手が起こりました。みんなで達成した北極点到達です!

さよならディナーの後はフォトジャーナルに入るスライドショーの試写会で楽しかった北極点クルーズを振り返りました。総航行距離2,982.6海里(5,523.78㎞)。

 


7月5日(金) ムルマンスク下船→小観光→AY7606(13:00/14:50)ヘルシンキ

早朝に荷物出しと朝食。モスクワ経由で中国に帰国するグループが先に出発し、チャーター便でヘルシンキに戻る私たちは防衛戦争の記念碑(アリョーシャ)など小観光の後、空港へ。

夏の旅行シーズンたけなわのヘルシンキ入国審査は1時間もかかりました。

今回の北極点は氷が厳しかった分達成感もひとしおでした。

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