南極・北極旅行&クルーズ 株式会社クルーズライフ

みんなの探検旅行~ブログ~
2020.01.31

【スタッフレポート】アデリーペンギンの繁殖

クルーズライフの「日本人通訳兼ナチュラリストガイド」として乗船した保阪瑠璃子さんより「アデリーペンギンの繁殖」をテーマにしたレポートをご紹介します。

 


今季の南極シーズン前半は11~1月の間に南極半島部分に3船で5往復しました。
ちょうどペンギン繁殖期の前半と重なり、良いタイミングの場面にも遭遇して観察する事が出来ましたので、南極固有種ペンギンであるアデリーペンギンを例にとって繁殖を考えてみたいと思います。

 

南極半島で見られる3種のペンギンで最も早く繁殖地に戻るのがアデリーペンギンです。

日照時間が長くなり始める10月初旬の南極半島は、まだ陸上の雪や海氷が残っています。

先に雄が前年の繁殖地に戻り、巣の補修をしながら雪が融け雌が戻ってくるのを待ちます。
雌雄は繁殖期が終わると次の繁殖期まで行動を共にしていないのです。

 

 

Petermann島(ピーターマン島) Nov.26,2019
うまく昨年の番(つがい)が会えても、お辞儀や見つめ合い、恍惚のディスプレイなどの求愛儀式を経てから数回の交尾を行います。
抱卵中の巣が多い中で遅い婚活と思われる交尾中の番もいました。
同じ島にいたゼンツーペンギンの多くはまだ婚活中で、ごくわずかの番が抱卵し始めたばかりでした。

 

コウテイ、キング以外のペンギンの産卵は3~4日間隔で2卵です。
下腹の羽が左右に分かれやすくなっている抱卵班の皮膚を卵に充てて体温で35℃位に保つ必要があります。
その間は巣の上に腹ばいになっているように見えますが、時々立ち上がっては背伸びをして、卵の角度を変えて均等に温まるようにするようです。
33日前後の抱卵期間中、3日間隔くらいで雌雄交代し抱卵を続けます。

 

 

Brown Bluff(ブラウンブラフ) Dec.17,2020
2卵の内、早く産卵した方が孵化しつつありました。
1日前位から進行中のようで、見ている間の10分くらいでようやく殻から出ました。
食べ残しの黄身が殻の中に少し残っていました。
羽はまだ濡れていて立ち上がれず、首も座っていません。
3日目位まで眼も見えないそうです。
もう一方の卵は足元に隠れています。
3~4日目の差で産卵するので、孵化も同様のずれが出ます。
他の番は約半数が孵化していました。これは孵化後数日位でしょう。
これから両親は忙しくなります。
天敵のオオトウゾクカモメやオオフルマカモメにヒナを盗まれないように守り、かつ餌のナンキョクオキアミを毎日たくさん食べさせる必要があります。
他の種類より早く繁殖を始めるアデリーは孵化後18日位までの間に冷たい雨や霙が降ると防水加工がされていないヒナの羽は濡れてしまい、低体温症で死んでしまう事さえあります。

 

Brown Bluff(ブラウンブラフ) Jan.14,2020
ナンキョクオキアミをたっぷり食べすっかり大きくなったアデリーの肥満児ヒナたちは、孵化後約30日で巣の単位を抜け出してクレシュと言う群れになり、両親は海へ餌取に出ます。
海から戻った親鳥は声で自分の子供を呼び出して餌を与えます。親子の認識は声です。
孵化前から親鳥は度々鳴いては自分の声を覚えさせると聞きました。
繁殖ホルモンが有り余って自分の子供と思われるヒナを襲おうとするしぐさを見せた親鳥を見ました。
ヒナは逃げずにそばに居ました。

 

 

Paulet島(ポーレット島) Jan.14,2020
孵化後数週間のアデリーがほとんどです。
親毛に換羽中も多く、早いヒナはあと2週間くらいで海に入り始めるでしょう。
1年目は親と違うノドジロです。1年後の換羽で親と同じノドグロとなります。

 

 

Useful Island Dec.16,2019
昨シーズンに生まれて1年間生き延びたアデリーペンギンです。
巣立ちしたばかりのヒナ特有のおどおどした眼差しに比べて自信たっぷりの鋭い視線を感じました。
栄養状態も良く、もうすぐ換羽して成鳥と同じノドグロとなります。
アデリーの最初の1年間の生存率は50%程度とか。
このアデリーの今後の安全を祈らずにはいられません。

 

Brown Bluff(ブラウンブラフ) Jan.14,2020
真っ黒な背中をしたアデリーペンギンに混じってほぼ白色の背中が見えたのでよく見てみると、黒色色素が極端に少ない突然変異のアデリーでした。
眼球は黒に近かったのでいわゆるアルビノではないのですが、驚きです。
本船に戻った後、なんとなく数年前に写した写真を見ていると、同じような色彩のアデリーの幼鳥が見つかりました。
しかも同じブラウンブラフで2017年2月6日に写したものです。
頭に産毛が残っているのです。
あの同じアデリーが3歳まで生き延びていたのかもしれないと思うとうれしくなりました!
今シーズンはあと2往復します。2月にペンギンがどのように育っているか楽しみです。

 

通訳兼ナチュラリスト 保阪瑠璃子
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