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ポーレット島 （PAULET ISLAND）

ウェッデル海の北西に浮かぶこの小さな島は、ダンディー島の南東5.8Km、エデン・ロックから南に8Kmの場所に位置しており、10万番（つがい）以上のアデリーペンギンの営巣地でもあります。11月～1月にかけて浜辺とその上方の丘陵地には、アデリーペンギンたちが所狭し立ち並びます。繁殖期真っただ中の12月後半から1月にかけては、地上はピンク色のグアノ（糞化石）で覆い尽くされ、その凄まじいニオイが風によって何キロも海上を漂います。1839～43年にこのあたりにいたイギリスのロス探検隊により、イギリス海軍の船長の名前をこの島に命名したとされるポーレット島には標高350メートルの火山円錐丘があり、この場所は1901～04年スウェーデンのノルデンショルド探検隊の小屋と墓のある場所でもあります。この海域には海氷が流れによって常に押し寄せているため、船を停泊すること、また近づくことが難しく、天気、海流などにより海岸線には常に海氷が押し寄せています。

上陸地点は島の北端中央部の浜で、この小石の浜は800メートルほどエプロンのように東へとのびています。浜辺は灰砂と小石が泥とグアノにまじった地形になっていて上陸の活動可能範囲は氷の状態とペンギンたちのその日の分布状態により左右されます。ペンギンのヒナたちが大きくなり海岸線にたわむれるようになると活動区域を確保することさえ難しくなります。ポーレット島のガレ場ではアシナガウミツバメたちが岩陰の間に営巣しており、ガレ場の付近を歩きまわることで地滑り等を起こし、巣を壊してしまうことがあるのでガレ場には近づいてはいけません。

ノルデンショルド探検隊の小屋は上陸地点より少し上がっていったところにあります。瓦のように薄く平らな玄武岩質のプレートが多くみられ、ノルデンショルド探検隊もこれを用いて避難小屋を建てました。船員のオレ・ウェナーズガードの墓に立つ十字架はキバナウの繁殖地を少し通り過ぎた浜辺の東側沿いに見られます。しかしながらこれをとり囲むようにペンギンたちが巣を作っているため、近づくことはほぼできない状態です。小屋の南側の陸にある卵型をした大きめの湖は古い火山の火口湖です。小屋周辺の稜線は浸食された岩や小石、溶岩石で形成されています。その上の湖周辺にもペンギンたちが営巣しており、そこからさらに斜面が急になりもう一段上の稜線へとつながっていきます。

繁殖期まっただ中では、上陸地点の右側で非常に活発なペンギンたちの活動が見られます。1か所の巣を選び、座ってのんびり観察できる場所を探したらそれを喧騒と共にじっくり楽しんでほしいですね。ポーレット島は非常に賑やかで躍動感あふれる場所であります。もし可能であれば浜辺沿いを歩くことでアデリーペンギン、キバナウ、サヤハシチドリたちの営巣中の様子が観察できます。サヤハシチドリは、キバナウの営巣地反対側の玄武岩の積み重なった場所に営巣しています。1月下旬になるとアデリーペンギンのヒナたちが海岸に歩きだし、ポーレット島の“活動頻繁期”が終わりを迎え始めます。ヒナたちはこれから3年間を海で過ごすことになるでしょう。自分たちの巣から離れた場所で、親から餌をもらい、太り、そして最後に、体重を少し絞り、換羽を終えたら海へと旅立ってゆきます。

アデリーペンギン、キバナウ、サヤハシチドリ、ユキドリ、アシナガウミツバメたちがここで営巣しています。1994～97年に行われた調査では10万番（つがい）を超えるアデリーペンギンの数が確認されています。しかし、北東の方向にあるアデリーペンギンの営巣地では調査が確実に行われたと言えないため、数はそれより数段多いことが予想されます。キバナウの営巣地は上陸地点の近くにあり、約300番（つがい）が毎年帰ってきます。唯一高所に巣を作るオオトウゾクカモメですが、ポーレット島には数番（つがい）しか営巣していません。オオトウゾクカモメは主に魚を餌としますが、ペンギンの卵やヒナを狙うこともあります。これだけのペンギンの大営巣地にほんの少しのオオトウゾクカモメしかいないのはまったく不思議です。ミナミオオセグロカモメもよく見かけますが訪問しに来るだけでこの島に営巣しているわけではありません。ウェッデルアザラシもたまに見かける事があります。またペンギンを狙うヒョウアザラシも波間に顔を見せることがあります。固着地衣類やコケ類はポーレット島の標高の高い傾斜地で見られます。