ロシア北極圏(Russian High Arctic)

 

〇人口:2,000,000人

〇地形:氷に覆われた群島

 

概要

ロシアの北極圏領土は国土の約3分の1を占めています。北極海、バレンツ海、ベーリング海、オホーツク海に沿って、24,140kmもの海岸線が続いています。ロシア北極圏の中心にはカラ海のノヴァヤゼムリャ、ラプテフ海のセヴェルナヤ・ゼムリャ諸島、東シベリア海のノヴォシビルスク諸島など、人里離れた群島があります。また、ノルウェーのスヴァールバル諸島の北東に位置するフランツ・ヨーゼフ・ランドはロシアの辺境の地であり、あまり人が訪れません。ロシアの国土の約20%は北極圏の北側にあり、氷河に覆われた山々や苔むしたツンドラ、壮大な海岸線のフィヨルドなどが広がっています。北極圏に住む世界の人口400万人のうち、ロシアの北極圏には約200万人が住んでいますが、セヴェルナヤ・ゼムリャ諸島のように、一握りの科学者を除いて全く人が住んでいない地域も多くあります。

 

目的地のハイライト(Destination Highlights)

●フランツ・ヨーゼフ・ランド(Franz Josef Land)

フランツ・ヨーゼフ・ランドは北極点から900kmの距離にある世界最北の群島です。192の島々からなる総面積16,000km²の無人島で、つい最近まで1年の大半が氷に覆われていました。
哺乳類ではホッキョクグマが多く生息しています。斜面や崖にはミツユビカモメやヒメウミスズメなどの海鳥の群れが生息しています。
海ではホッキョククジラやタイセイヨウセイウチが活躍しています。
フランツ・ヨーゼフ・ランドは極地の歴史愛好家にとって興味深い場所です。ノルウェー岬のジャクソン島は、ノルウェーの探検家であるフリチョフ・ナンセン(後にノーベル平和賞受賞者)とヤルマル・ヨハンセンが1895年から96年にかけて越冬した場所です。彼らの小さな小屋の跡が残っています。

 

●セヴェルナヤ・ゼムリャ諸島(Severnaya Zemlya)

科学者と治安部隊を除いて、セヴェルナヤ・ゼムリャ諸島には誰も住んでいません。地球上で最後の主要な領土発見です。37,000km²の群島は1913年に初めて探検され、1930~32年に海図が作成されました。その島々には十月革命島やボリシェヴィク島などがあります。
セヴェルナヤ・ゼムリャ諸島は氷河に覆われた山々、苔むしたツンドラ、壮大なフィヨルドで構成されています。野生動物としては、鳥、レミング、オオカミなどがよく見られます。冬は厳しく、気温は-30℃まで下がります。雪が降らない期間は2ヶ月半ほどしかありません。木々が生えていない風景の中で、地衣類や灌木が唯一目に見える形で生えています。セヴェルナヤ・ゼムリャ諸島を訪れることは、真のロシア北極圏を体験することなのです。

 

●ノヴァヤゼムリャ(Novaya Zemlya)

ノヴァヤゼムリャは旅行者を極限にまで高めます。 ある旅行者はロシア北西部の辺境にあるこの群島を「過酷な天候の、人を寄せ付けない場所」と表現しました。セヴェルヌィ島(北島)とユージヌィ島(南島)の2つの主要な島は広大です。北極海のバレンツ海とカラ海の間に位置しています。
国土の4分の1以上が永久に氷に覆われており、北と南の大部分が北極圏の砂漠とされています。氷のない部分にはツンドラや沼地が広がっています。ノヴァヤゼムリャには、レミング、ホッキョクギツネ、アザラシ、セイウチなどが生息しています。ホッキョクグマもたまに現れます。

 

 

見所(Top Things to See)

●ロシア北極圏国立公園(Russian Arctic National Park)

ロシアで最も新しい国立公園はロシアで最も北に位置する最大の自然保護地域です。この公園はノヴァヤゼムリャ北部とフランツ・ヨーゼフ・ランドの2つの群島を占め、これらを合わせて「地球の端」と呼ぶこともあります。この広大な地域は北極圏を代表するホッキョクグマ、セイウチ、イッカクなどの哺乳類や、さまざまな鳥類の主要な生息地となっています。また、ヨーロッパからの最初の訪問者が越冬した場所でもあり、国立公園内には保存状態の良いソ連の極地研究施設があります。

 

●グレートアークティック国立自然保護区(Great Arctic State Nature Reserve)

グレートアークティック国立自然保護区はカラ海のほとんどの離島、一部の海岸線、セヴェルナヤ・ゼムリャ諸島の一部を含んでいます。400万haという世界最大級の自然保護区であり、ロシアおよびユーラシア大陸で最大の自然保護区です。
1980年代後半、タイミル半島で野外調査を行っていた科学者たちが、この保護区を設立するきっかけとなり、この北極圏のユニークな生態系を守りたいと考えました。1993年に承認されたこの保護区は、現在も多くの重要な鳥類や哺乳類の生息地として保護されています。

 

●野生動物(Wildlife)

ロシア北極圏にはホッキョクグマ、セイウチ、ベルーガ(シロイルカ)、イッカク、ホッキョククジラなどの野生動物が生息しています。その理由は、ロシアの北極圏の海岸線が遠く離れていること、人間の存在が最小限であること、そして水域の生物学的生産性の高さにあります。バレンツ海やカラ海では、大西洋の暖かい海水と北極海の冷たい海水が混ざり合い、ロシアの巨大な大陸河川(オビ川やエニセイ川など)からの淡水の流入により、ユニークで豊かな生態系が形成されています。特に夏場の季節的な海氷の生息地には、ホッキョクグマや海洋哺乳類が集まります。

 

●歴史的建造物(Historical Sites)

冷戦時代に極秘裏に設置されたソ連の極地観測所が、最近になって海外に公開されました。しかし、ロシアの歴史に北極が登場するのは、それよりもずっと前のことです。ヨーロッパが初めて北極圏に進出したのも、このロシア北極圏の海岸からでした。例えば、16世紀後半にウィレム・バレンツがヨーロッパ人として初めてノヴァヤゼムリャで越冬し、極地探検の時代にはフランツ・ヨーゼフ・ランドが北極点探検の拠点となったように。近年、極地探検家たちを魅了しているのが、北極点から1,000kmも離れていないセヴェルナヤ・ゼムリャ諸島のアルクチチェスキー岬です。

 

注目ポイント(Points of Interest)

ムルマンスク(Murmansk)

多くの観光客にとってムルマンスクはロシアの海の歴史を学ぶ場所でもあります。北極圏以北最大の都市であるムルマンスク(人口:303,700人)は、ロシア北西部のバレンツ海沖の深い湾の端に位置しており、船や極地探検に興味がある人にとっては理想的な立ち寄り地です。
北方海軍博物館や海運史博物館は、歴史ファンを魅了しています。退役した原子力砕氷船「レーニン」は、現在、ムルマンスクの桟橋で博物館として運営されています。ムルマンスクは、ロシア北極圏を探検する際の主要な乗船港となっています。

 

●ルビニ・ロック、フッカー島(Rubini Rock, Hooker Island)

フッカー島近くのティハヤ湾に位置するルビニ・ロックは、フランツ・ヨーゼフ・ランド最大の海鳥のコロニーのひとつです。北極海を見下ろす玄武岩の柱の上には、1万羽ものハシブトウミガラス、ミツユビカモメ、ヒメウミスズメ、フルマカモメなどが巣を作っています。この岩の名前は、イタリアのオペラ歌手ジョバンニ・ルビーニ・ゾディアックにちなんで名付けられたものですが、その理由は、この岩に住む鳥たちの絶え間ない歌声や鳴き声にあったに違いありません。
ゾディアックや小型のクルーズボートで見学すると、氷河や流氷、そして流氷の上でくつろぐセイウチの姿を間近に見ることができます。

●テルマン・フィヨルド(Tellman Fjord)

テルマン・フィヨルドはセヴェルナヤ・ゼムリャ諸島のボリシェヴィク島の北西部に位置し、ロシア北極圏でも訪問者の少ない場所のひとつです。 テルマン・フィヨルドに上陸するとハイキングが楽しめ、セメノフ-チャンスキー氷河やグロトフ氷床を一望することができます。

 

●ストリチキ島とアポロノバ島(Stolichki and Apollonova Islands)

フランツ・ヨーゼフ・ランドの中心に位置するストリチキ島とアポロノバ島は、夏になるとセイウチが上陸することで知られています。数百頭ものセイウチが、海岸や周辺海域の果てしない流氷の上にいるのをよく見かけます。

 

いつ行くべきか(When to Go)

●最適な季節(Ideal Season)

真夏の6月から8月にかけては、太陽が24時間地平線上にあるため、野生動物が見やすくなります。
この時期は、海鳥が多く見られます。