■タイリクオオカミ(ハイイロオオカミ)(Gray wolf )

●体長:100~160cm ●体重:25~60kg
●分布エリア:北半球や北極圏
●エサ:哺乳類
●寿命:10~20年、野生では5~10年
●学名:Canis lupus

オオカミは原始的な野生の犬で、人間に飼育されているイヌ科動物の祖先にあたります。オオカミは地域により外見が大きく異なり、北極ではほっそりしていて、色は白が多いようです。人類を別にすれば、ハイイロオオカミ(タイリクオオカミ)は現存する陸生哺乳類の中で最も広い行動範囲を持っている動物です。

オオカミは複雑な社会生活を営んでおり、「パック」と呼ばれる群れで移動します。このパックはたいてい優位に立つ番(つがい)の雌雄、その子供たち、そしてこれら中心的家族と遺伝関係を持つ数匹の成獣オオカミから成り立っています。優位に立つ雌は5~6月に目立たない巣穴で最多10匹までの子を産みます。夏の活動はこの巣の周辺に集中します。群れ全体が子育てに協力し、狩りで仕留めた獲物を母子に食べさせたり、母が狩りに出かけるときには他のオオカミが子守り役をしたり、巣穴周辺をアメリカヒグマなどの天敵から守ったりします。秋までに子供たちは自由に歩き回れるようになり、群れは一層移動的になります。

オオカミは肉食獣で、消化器系全体が肉食の食生活に適応しています。生活は狩りと見事に調和していて、ヘラジカやカリブーが豊富な時期は群れて狩りができるように集団で生活します。群れは他のオオカミから身を守るため独特なテリトリー(縄張り)を用います。移動性のカリブーのような動物が主な獲物となる冬の時期は、オオカミは長距離を移動することがあります。オオカミは年取ったり、幼かったり、負傷したり、あるいは不具になった獲物を選択して捕食の対象から外します。北東アジアでは、オオカミがトナカイを大量に捕食するようになったため、カリブーに対する捕食圧が弱まった地域もあります。この他にも、ヘラジカ、オオツノヒツジ、マーモット、ジリス、ウサギ、ネズミ、さらには産卵するサケのような魚まで多くの動物を食料にします。オオカミは大量の食べ物を頻繁に食べることもできれば、数日間何も食べないことも必要に応じて可能です。

 

■ホッキョクギツネ(アオキツネ)(Arctic fox )

●体長:46~68cm ●体重:1.5~9kg
●分布エリア:北極地域、亜北極圏
●エサ:魚、動物の死骸
●寿命:3~6年
●学名:Vulpes lagopus

 

ホッキョクギツネ/Heritage Expeditions

夏の間は、キツネは四六時中活動していて、24時間昼間の北極の太陽光を利用します。秋と冬に夜行性となります。メスは2月~3月に発情します。繁殖場所となる岩だらけの尾根や崖を探して、長い枝分かれした巣穴を掘って、そこで4月や5月に子を産みます。驚くべきことに1産につき10子を産むこともあります。キツネはこのほかに、風や雪の避難所としても巣穴を掘ります。

ホッキョクギツネは大胆かつ狡猾な捕食者です。やはり、食べ物を確保したり、保存したりする技術は厳しい環境下で生き残るためには必須で、ホッキョクギツネも同様に感心するほどの量の食料の蓄えをします。ある貯蔵穴を掘って調査したところ、コウミスズメが36羽、ユキホオジロが4羽、ウミガラスが2羽、さらに鳥の卵が多数発見されました。この他にもホッキョクギツネはレミング、ハタネズミ、ハツカネズミ、死肉(特に冬に)、貝あるいは海岸に打ち上げられたゴミなども食べます。

ホッキョクギツネは生涯のほとんどをツンドラや森林ツンドラで過ごすとはいえ、その生息域は様々です。丘陵、平地、川の流域、湖畔や島々はより安全で生活に適しているようです。冬には北は北極の氷を越え、南はタイガの針葉樹林まで移動します。その分布範囲は広く、北極地方、シベリア、カムチャッカやヨーロッパ部ロシアの北部、スカンジナビア、アイスランド、グリーンランド、アラスカ、そしてカナダの全域に及んでいます。

ホッキョクギツネは、たくさんの餌に恵まれ、良い巣穴があり、自然保護区で罠を仕掛ける事も出来ないためウランゲリ島にたくさん生息しています。

 

 

■グリズリー(ハイイロヒグマ)(Grizzly bear)

●体長:1.5~2m ●体重:150~300kg
●分布エリア:北アメリカ
●エサ:サケ、マス、バス、果実、昆虫、哺乳類
●寿命:25年
●学名:Ursus arctos horribilis

ロシア北極圏において、グリズリー(別名「ハイイログマ」「アメリカヒグマ」)はツンドラではあまり見かけられませんが、チュクチ半島でははるかに多く生息しています。また、ブルックス山脈や北部アラスカのアークティック・スロープ一帯でも見られます。グリズリーの分布範囲は国境を越えてカナダにまで広がっていますが、東はハドソン湾に達していません。その北限はツンドラです。

ハイイログマ/Heritage Expeditions

グリズリーは2週間かけて深い冬眠に入り、何者かに邪魔されないかぎり、春まで目覚めることはありません。休眠中は体温が約5℃下がるだけで、採食、排尿や排便は行いません。この間、巣穴に入る前に蓄えた体脂肪を使います。巣にこもったり、出たりする時期はある程度天候に左右されますが、ブルックス山脈のクマは通常10月に冬眠をし始めます。永久凍土層の土壌特性を利用して南向き傾斜地(凍土が2mに達する、これに対して北側は30cm~60cm程度)に巣穴を作ることが多いです。

グリズリーが繁殖するには、多様性に富み、なるべく人から隔たった広大な荒野のような場所が必要です。雑食性で、ほとんどの時間を栄養分のある食料を漁るのに充てます。その食餌は動物や植物を幅広く食べ、季節によっても変化します。摂取する動物性の食べ物は齧歯目(特にリス)、死肉、魚、ヘラジカやカリブーなどです。夏が深まり秋になると、草本、トクサ、ベリーの摂取量が多くなります。

 

 

 

■アラスカウサギ(ツンドラウサギ)(Alaskan [Tundra]hare)

●体長:50~70cm ●体重:平均4.8kg
●分布エリア:アラスカ州のツンドラ
●エサ:植物、果物
●寿命:-
●学名:lepus othus

小型哺乳類のアラスカウサギ(別名「ツンドラウサギ」)は人が全く立ち入ることができないような区域に生息しているため、その生態はほとんど知られていません。外見はユキウサギに似ており、アラスカ西部やブルックス山脈の北西丘陵地帯に分布しています。このウサギは短い北極の生育期に適応し、北極地方に生息する4つの大型ウサギ目の中では最も早い成長率を持つようになりました。

 

 

 

■ユキウサギ(ホッキョクウサギ)(Arctic hare)

●体長:43~70cm ●体重:2.5~5.5kg
●分布エリア:グリーンランドのツンドラ地域からカナダの北端など広範囲
●エサ:植物、果実
●寿命:3~8年
●学名:Lepus arcticus

 

ユキウサギ/Quark-Expeditions

ユキウサギ(別名「ノウサギ」はおそらく世界のウサギ目の中でも最も北方に分布していて、ラブラドルのツンドラ地域、北部カナダやグリーンランドの沿岸部に広く生息しています。西方への分布はマッケンジー川の河口付近で終わり、アラスカウサギがこれに替わります。寒冷で不毛な生息環境に高度に適応しており、夏は樹木境界線のj北方で過ごし、冬になると森林限界の北辺に160kmも入り込んだ場所でも発見されています。

その生育環境は一般に広大な面積の極地砂漠、半砂漠や稀に生産力のある草地に特徴づけられています。このうち、植生が乏しい半砂漠で発見されるものが大多数です。そこではムラサキユキノシタ、ホッキョクヤナギ、カヤツグサ科のCartex nardina(スゲの一種)の3種の維管束植物が優位に生息しています。ユキウサギはおそらくこのうちのホッキョクヤナギのみを食べており、もしそうだとすると極めて限られたエネルギー基盤で生きているということになります。冬には強風にさらされ、まばらにしか植物が育たない丘陵の斜面に引きこもり、ごくわずかの植物を食べます。ユキウサギは高北極地域の月間平均気温(最寒月の-38℃から最暖月の-6℃にわたる)の中でも生きていくことができます。風雪が吹き付けて冷凍してしまうため、1年のうち280日分の食糧を地中に埋めて蓄えます。

ユキウサギ/Quark-Expeditions

昼間の時間が長い5月初旬になると繁殖が始まります。ユキウサギは1産につき5~6羽の子を孕み、6月下旬になると小石や砂利を掻き出して作った浅い窪地に出産します。窪地は身を守るため大抵岩陰に作られます。岩だらけの地形の中で出産場所を見つけることは非常に困難を極めます。

単独性の動物ではありますが、秋から冬にかけてユキウサギは大きな群れを作ります。これは高北極地域に住むものに特有の習性です。このような群れを作る理由はいまだ解明されてはいませんが、捕食者から身を守る本能であると考えられています。危険が近づくと、群れは一斉に丘陵や斜面に逃れ、岩の割れ目や大きな石の間に身をひそめます。

 

■アラスカマーモット(Alaskan marmot)

●体長:54~65cm ●体重:2.5~4kg
●分布エリア:北極、アラスカのブルックス山脈など
●エサ:植物、果実、穀物
●寿命:13~15年
●学名:Marmota broweri

このリス科の動物はブルックス山脈や、カナダのマッケンジー川西方に位置するリチャードソン山脈にも生息しています。その東方の境界については確かなことは分かっていません。マーモットは完全な冬眠動物で、冬の食べ物を蓄えることがなく、身につけた脂肪だけで生きています。1つのコロニーにつき1つの巣穴で一緒に冬眠し、これはユーラシアのマーモットに見られる習性と同じです。アラスカマーモットは冬眠から目覚めたあと、植物の成長期に合わせて、成獣が巣を離れる前に子を産みます。

 

■ホッキョクジリス(Arctic ground squirrel)

●体長:21.5~25cm ●体重:750g
●分布エリア:北極圏からカナダのブリティッシュコロンビア州など
●エサ:植物、果実、穀物、キノコ
●寿命:7~10年
●学名:Spermophilus parryii

北米に住むホッキョクジリス(別名「オナガホッキョクジリス」)の最北の個体群はアラスカのバロー岬(北緯71度)に顕著に見られます。複雑な巣穴(トンネル)を必要とするため、永住するコロニーは草木が少なく水はけの良い場所に限られます。これらは大抵氷河のモレーンや川岸の土手の縁になっており、ツンドラの古い浜堤にあります。バロー岬付近の平坦な海岸ツンドラ地域は永久凍土層の卓状地で、砂質の土が隆起した地形のため巣穴を掘るには格好の場所となっています。

ホッキョクジリスは季節周期的な活動を維持していて、毎年これを繰り返します。基本的には肥える、冬眠する、繁殖するというものです。冬眠は9月末に始まり、3月中旬から4月中旬にかけて姿を現します。一日中昼の光が降り注ぐ日でも、ジリスは通常の昼夜のリズムがあるかのように行動します。

ホッキョクジリス/Heritage Expeditions

夜間は、体温が奪われエサを漁る効率が著しく悪くなるためか、ほとんど活動を観察できることはできません。このジリスは一般的には午前6時から午後8時にかけて活動し、ほとんどの活動は午前中に行われます。これ以外の時間は巣穴で過ごします。ホッキョクジリスの代謝効率が良いのは体が適度な大きさであること、熱伝導率が低いこと、生息地の日照時間をうまく選んで活動していること、1日の中で最も寒い時間帯には活動を停止していることや、巣が十分保温されていることに起因しています。このため周囲が比較的寒い状態でも高く安定した体温を維持することができるのです。微気候を利用し、十分なエネルギーを蓄えて、冬の脂肪蓄積率を15~20%高めます。これは1年のうち3~4か月しかエサを獲ることができない動物にとってはとりわけ重要です。

 

■ホッキョクトガリネズミ(Arctic shrew)

●体長:10~12cm ●体重:5~13kg
●分布エリア:北極圏、アメリカ北部
●エサ:昆虫やクモ
●寿命:約18か月
●学名:Sorex arcticus

トガリネズミは主として肉食で、昆虫やクモを食べます。1年中活動し、雪下の巣穴で狩りをします。トガリネズミの研究は北極地域以外ではすでに行われてきましたが、1959~61年に(北緯65度にあり、厳密な解釈をすれば北極地域に該当しないが)北極地方の特徴をそなえたアラスカ西部のトムソン岬近辺で生態学上の研究が行われました。研究者たちはホッキョクトガリネズミArctic shrewとマスクトガリネズミMasked shrewの2種のトガリネズミについて報告しました。これらの小型哺乳動物は過剰な水がなく、湿っていて安定性のある植物群生を好む傾向があります。しかし、個体数が増加すると上記のような条件通りではなく、高湿度であったり、乾燥していたり、安定度が低い土地でも発見されます。ホッキョクトガリネズミは一般的に、丘陵の斜面に生息していて、平坦な谷底の渓谷に住む場合でも尾根状の起伏のある場所を探し出します。クロトガリネズミDusky shrewはブルックス山脈全域と北部の丘陵地帯に生息しています。この種は頭上に遮蔽物がある場合には、海岸の平野部に棲むことがあります。水の流れによっては、ヤナギやハンノキの雑木林がある、洪水時に氾濫した川沿いの平野部を住処とします。