■ホッキョククジラ(Bowhead Whale)

●体長:15~18m ●体重:75~100トン
●分布エリア:北極海とその周辺など
●エサ:オキアミや動物性プランクトン
●寿命:100年、最長200年
●学名:Balaena mysticetus

 

ホッキョククジラ/Quark-Expeditions

英語名のbowhead(bow 弓+head 頭)は湾曲した上あごと体長の40%以上を占める頭部の形状から来ています。頭頂部に一対の噴気孔がありますが、これはおそらく氷によって、水中からの浮上が限られている場所での呼吸に適応したと考えられます。(ホッキョククジラは厚さ60cmの氷を突破することで知られています。多数の細長いひげ板と細い口吻を含む湾曲した下唇を持っています。胸びれは短く、へら状をしています。イヌイットの漁師たちが最も重宝する部分は今も昔もムクトック(表皮)で、これは究極のご馳走であり、特にこれを得るために現代でも狩猟は行なわれています。ホッキョククジラの体色は全身黒色で、下あごに白斑があります。個体によっては尾柄部が白色のものもあります。

ホッキョククジラは動物性プランクトンを主に捕食し、小中のカイアシ類、オキアミ、ヨコエビ類を主食としています。口を開けてエサの大群の中を泳ぎまわり、口中にたまったエサをすくい取り1日に3,000ポンド(約1.3t)を平らげます。夏の4ヵ月の間に食べるものがこのクジラを1年間支えるに足る備蓄になるものと考えられています。冬の捕食は年間の食物摂取の重要部分ではないと考えられます。

ホッキョククジラは12~20歳で性的に成熟します。メスは3~7年ごとに、おそらく4月または5月に1子を産みます。交尾もこの時期に行なわれ、妊娠期間はおよそ12~16ヵ月です。また、哺乳期間は約1年です。

 

 

■ザトウクジラ(Humpback Whale)

●体長:13~16m ●体重:25~30トン
●分布エリア:北半球、南半球ほぼ世界中
●エサ:オキアミやニシン、シシャモなど
●寿命:40~77年
●学名:Megaptera novaeangliae

 

ザトウクジラ/Quark-Expeditions

ザトウクジラは極めて長い胸びれを持ち、ヒゲクジラ類の中でもよりずんぐりとした体型をしており、また他のナガスクジラの方が流線型をしています。口吻および下唇には肉質の瘤(こぶ)があります。尾びれは幅広で、不規則なふちがついています。体の色は黒色で、喉と腹部に白色部があり、胸ひれと尾ひれにも白色部があります。成体の平均体長は49ft(15m)、体重は35tにも達します。

ザトウクジラ/Quark-Expeditions

ザトウクジラは他のクジラに比べると沿岸寄りを南北に回遊し、しばしば浅瀬(島と島の間のラグーン)で交尾します。通常最大12頭程度で群れをつくりますが、冬の繁殖場およびエサ場ではより大きな集団を形成することも珍しくありません。ザトウクジラは身軽で、よく水面上に跳躍したり、スパイホップしたり、あるいは尾で水面を叩いたりといった仕草を見せます。ザトウクジラは絶滅危惧種とされており、1966年以降商業捕鯨が禁止されています。

 

■コクジラ(Gray Whale )

●体長:14m ●体重:33トン
●分布エリア:北太平洋(北米沿岸に生息する東側とアジア側沿岸の西側に分かれる)
●エサ:底生動物
●寿命:50~70年
●学名:Eschrichtius robustus

コククジラは唯一の底生性採食(海底で採食する)クジラで、泥をさらってはそのクジラ髭で底に住むヨコエビ類や甲殻類を漉(こ)して取ります。メキシコで交尾し、沿岸水域を通って北方へ移動し、ユニマック水路を通って、ベーリング海、チュクチ海、ボーフォート海のエサ場へと向かいます。成体の平均体長は約46ft(14m)で、体重は33tです。たくましい体躯をしていて、頭部は三角形です。上あごは比較的細くて下方に湾曲しており、黄色いひげ板が片側で180枚あります。斑紋のある灰色の表皮はフジツボなどで覆われ、時々寄生生物のクジラジラミが養生してオレンジ色になった箇所があります。背びれの代わりに低い背中の瘤があり、これに尾柄部の背筋の瘤が数個続いています。

コククジラが2、3頭の群れで回遊しているときに水面上に跳躍したり、あるいは尾で水面をたたいたりすることがあり、また分娩場所では船の近くによってくることでも知られています。

 

 

■シロナガスクジラ(Blue Whale )

●体長:26~30m ●体重:100~160トン
●分布エリア:全海域(オホーツク海や地中海、ベーリング海などには生息しない)
●エサ:オキアミなど
●寿命:30~80年
●学名:Balaenoptera musculus

 

シロナガスクジラ/Quark-Expeditions

このクジラは地球上最大の動物で、成体の平均体長は85ft(26m)、体重は100tにも達します。体躯は大きく、流線型をしています。口吻は幅が広く、平坦で、U字型をしており、片側で400枚の広い黒色のひげ板があります。背びれは細長くて先がとがっており、尾ひれは幅広で切れ込みがある真っすぐなふちが付いています。体色は灰青色で、薄い斑紋が散在しています。ずっと後方には小さな形を変えることができる背びれがあります。通常単独もしくはペアで移動し、泳ぎが速く20ノットくらいまで出すことができます。

20世紀初頭に近代的な捕鯨技術が発達すると、シロナガスクジラはたちまち遠洋捕鯨船団の最初の標的になりました。1910年以来、1966年に最終的に保護の合意がなされるまで、シロナガスクジラは容赦なく捕獲されました。この時期に推定33万頭のシロナガスクジラが殺されましたが、1931年だけで29,400頭が捕獲されました。この捕鯨が止まったのはシロナガスクジラが絶滅の危機に瀕して漸くのことでした。このクジラは10年以上も「商業的絶滅」をしており、現在の個体数を正確に推定させる十分なデータはありません。シロナガスクジラの商業捕獲が禁止されて以来、この種についてほとんど調査が行われていないのが現状です。

 

■ナガスクジラ(Fin Whale)

●体長:18~27 m ●体重:30~80トン
●分布エリア:世界中の海(熱帯海域では見られない)
●エサ:魚類やオキアミなど
●寿命:80~90年
●学名:Balaenoptera physalus

 

ナガスクジラ/Quark-Expeditions

体長24mに達するナガスクジラはシロナガスクジラに次いで大きいクジラです。シロナガス同様流線型をしていますがよりほっそりしています。下あごは右側だけが白色です。ナガスクジラも急速に商業的絶滅種になりつつありました。原因としてあげられるのは、大型でクジラ製品としても効率が良いからでした。現存推定数は南半球では元の数の約5分の一で、北太平洋では元の数の約3分の一です。1970年以来保護されており、数は回復しつつあるかもしれませんが、商業捕鯨の復活になる危険性もあります。

 

 

■ミンククジラ(Minke Whale )

●体長:7~10m ●体重:6~10トン
●分布エリア:全海域
●エサ:オキアミ、魚類など
●寿命:50年
●学名:Balaenoptera acutorostrata

 

ミンククジラ/Quark-Expeditions

ミンククジラ(ノルウェーの捕鯨漁師ミンケの名が付いた)はナガスクジラ属の中でも最小で9m位しかなりません。特徴ある黄色っぽい白色のヒゲ板で、胸びれにはしばしば青白い帯があります。この種に関するわずかばかりの情報は日本の捕鯨業者による目撃情報です。性別と年齢別のばらつきがあり、その分布にもむらがあります。ミンククジラを見つけるのは困難です。離れたところで飛び上がった時以外は大抵波間に隠れているからです。ミンククジラは長い間沿岸捕鯨の対象として重要な小型鯨の1つでした。しかし、大型鯨の減少につれて遠洋捕鯨船団が次第に目を向けるようになったのでした。

 

■イワシクジラSei Whale

●体長:14~16m ●体重:20~25トン
●分布エリア:亜熱帯から亜寒帯の海洋
●エサ:甲殻類、魚類、プランクトン
●寿命:50~75年
●学名:Balaenoptera borealis

イワシクジラ(Sei)はギンダラを意味するノルウェー語)は毎年タラが出現するのと同じ時期に、ノルウェー海岸の沖合に姿を現します。体長は約60ft(18m)に達し、ナガスクジラやシロナガスクジラよりもぽっちゃりとしています。内ふちがほつれた、独特の灰白色のクジラひげがあります。鎌形の背びれはぴんと立ち、2ft(60cm)ほどの長さがあります。イワシクジラはヒゲクジラの中でも泳ぐのが一番速く、最高時速20ノットまで出すことができます。通常は単独もしくは2~5頭の集団で行動します。絶滅危惧種に含まれており、1977年以降は商業捕獲は行われていません。

 

■シロイルカ(Beluga Whale)

●体長:4~5.5m ●体重:約1トン
●分布エリア:北極海、ベーリング海北部、オホーツク海、クック湾、セントローレンス湾
●エサ:魚類、甲殻類、貝類、軟体動物
●寿命:35~40年
●学名:Delphinapterus leucas

 

シロイルカ/Quark-Expeditions

シロイルカは鯨には珍しく明確な首のくびれがあって、頭をほぼ直角まで横に曲げることもできます。はっきりした背びれが無く、学名のDelphinapterus leucasもラテン語で「翼のないイルカ」と言う意味です。しかし、背中の半ばから尾にかけて盛り上がりがあり、身体の他の部分よりも黒ずんでいて氷と接するためか傷跡があります。胸びれはかなり多彩な動作を行う事ができ、ゆっくりと後ずさりしながら泳ぐなど狭い場所でうまく動き回るのに重要な機能を果たしています。胸びれの縁は年齢と共に反り返ります。体色は出生時には灰褐色ですが次第に薄くなり、大体5~6歳の成獣になると純白になります。

シロイルカはかなり多彩な肉体および顔面表情をすることができ、口を大きく開けて釘のように並んだ32~40本の歯を見せる事をします。見えている部分がずいぶん磨滅しているので獲物も捕らえられないように見えます。歯が2~3歳くらいになって初めて生えて来ることから考えると、歯の主な目的は捕食のためでなく、威嚇のためや、顎を鳴らすためかもしれません。

多彩な音を出すこともできる動物で、空気中でも容易に聞くことが出来ます。音の範囲は「ムー」、「チュッチュッ」、「ピーピー」、「カンカン」などで、シロイルカの群れが水中で出す音は農家の前庭のようににぎやかです。昔は海のカナリアとも呼ばれていました。発音能力と反響定位能力に加えて視覚を使ってコミュニケーションを取ったり捕食したりします。表現の多彩さから見て、シロイルカは微妙な社会的コミュニケーションを取っていると考えられます。

 

シロイルカ/Quark-Expeditions

シロイルカは様々な郡遊漁、甲殻類、虫、時には軟体動物も食べます。事実、100種類以上の餌を精巧な反響定位を使って捕食します。シロイルカは5頭かそれ以上の連携プレーで魚の群れを浅瀬やなだらかな砂浜に追い込む事も出来ます。その他にも、しなやかな首を使って海底の表面を掃いて、吸引力と水の噴出で獲物を追い立てる事もします。捕食のシーズンに食べたものは脂肪として蓄えられて冬の保温とエネルギー源となります。

シロイルカは5~8歳で繁殖年齢に達し、春の交尾後14か月の妊娠期間後に一子を隔年に出産します。授乳期間は1~2年です。シロイルカの寿命は35年かそれ以上です。北極海全域に最も広く分布しているハククジラで、亜北極までも及びます。アラスカのイヌイットは先住民生存捕鯨として年間200~300頭捕獲していますが、個体数は安定しています。シロイルカはその白い表皮ゆえに珍重されています。

 

 

■イッカク(Narwhal )

●体長:雄約4.7m、雌約4.2m ●体重:雄約1.5トン、雌1トンに満たない
●分布エリア:カナダ高北極地域
●エサ:頭足動物、軟体動物、ホッキョクタラ(鱈)やグリーンランドオヒョウ(オオヒラメ)
●寿命:50年
●学名:Monodon monoceros

イッカクが海岸線を悠々と並んで泳ぐ様を見ると畏敬の念を抱かずにはいられません。不思議な体色をしていて、灰緑色・クリーム色・黒色の細かい斑点があり、まるで硬いブラシでさっと描いたように見えます。とりわけ目を見張るのは伝説にもなっている、雄が呼吸をする際に海面につきだす一本の牙です。大きな、反時計回りのらせん状の溝が付いていて、長さ3m位(体長の5分の3)まであって比較的小型の鯨にしては不釣り合いとも思える牙は中心ではなく左の上唇から左に向かって奇妙な角度で突き出していて、やや下を向いています。老齢の雄の尾は反り返り、まるで後ろから前へ生えているような風体でますます奇妙です。学名の意味は一本歯、一本角です。

体型はシロイルカとイッカクは良く似ていますが、イッカクの方が少し大型です。イッカクは歯が2本しかなく、いずれも歯としては機能していません。雄の歯の一本は牙になり、少数の雄には牙が2本生え、少数の雌には1本の牙が生える事があります。牙の目的の詳しい事は分かっていませんが、社会生活や繁殖の際に優位を確保するためかも知れません。

イッカクの主食は頭足類と他の軟体動物、コオリダラ、グリーンランドオヒョウなどです。氷縁部や流氷群近くで捕食しますが夏を過ごす海域ではほとんど食べません。雌は6~8歳で繁殖年齢になり、夏の海域に入る前の7月半ばごろに出産します。交尾は4月半ばに行われると見られ、妊娠期間は14.5か月となります。授乳期間はシロイルカ同様におそらく1~2年で、従って出産は3年に一度程度となります。

イッカクはカナダ高緯度海域、グリーンランド北西と北東部に見られますが、小さな群れはスヴァールバル諸島とフランヨーゼフ・ランド周辺にもいます。群れは子供連れの雌の群れで、身体の大きさ、体色、牙の大きさが同じくらいの大きな雌の群れがその中をぶらついていますが、フィヨルドの中では広く散らばる傾向があります。イッカクの牙は収集家や博物館により珍重されているため、先住民狩人のイッカク狩猟に対する強い動機づけとなっています。そのため、捕獲数の監視と割り当て制が導入され、その中には仕留めたまま沈んで行方不明になった物も算定値に含まれます。イッカクはエンジン音におびえて隠れてしまう事が多く、仕留めるのは容易ではありません。

 

■シャチ(Killer Whale or Orca)

●体長:6~9m ●体重:8トン
●分布エリア:世界中の海
●エサ:哺乳類、魚類など多岐に渡る。個体ごとに様々な好みがある。
●寿命:30~50年、最長80年
●学名:Orcinus orca

 

シャチ/Heritage Expeditions

体重約8トン、体長20~23ft(6~7m)のシャチ(別名「オルカ」)はハクジラ類の中でも最も世界中に分布しています。頑丈な体躯と丸い頭部、短い嘴を持っています。胸びれは大きく櫂状をしています。シャチは体色が黒色で、あごと腹が白色、それに目の後ろに斑紋があることから容易に見分けがつきます。オスは6ft(1.8m)もある突起した背びれを見せつけます。極めて社会性があり、しばし400頭にもなる群れで回遊します。水面上への跳躍、スパイホップ、あるいは尾で水面を叩くといった行動がよく見られます。さらに、時には共同で狩りを行ったり採食したりします。シャチは氷の縁辺から沖合500マイル(80km)のあたりまで見ることができます。