■カリブー(Caribou/Reindeer)

●体長:1.2~2.2m ●体重:60~300kg
●分布エリア:北極圏周辺、アラスカ、スヴァールバル諸島、フィンランド、ロシア
●エサ:植物
●寿命:15年
●学名:Rangifer tarandus

北米ではカリブーと呼ばれていますが、ほとんどの専門家たちはカリブーとトナカイは同じトナカイRangifer Tarandusの変種と考えています。カリブーはインディアン語源の新世界(アメリカ大陸)の名称であるのに対して、トナカイは家畜と野生の両方を表す旧世界(ユーラシア大陸)の名称です。これ以外の種ではほぼ全身白色のツンドラトナカイPeary’s caribou(R.t pearyi)とブリティッシュ・コロンビアに生息するシンリントナカイWoodland caribou(R.t caribou)があります。

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カリブーは大型のシカ科の仲間です。柔らかな地面を歩いたり、雪を掘ることができるようにくぼんでいて蹄は幅が広がっています。メス・オスともに枝角を生やしていますが、これはオスの場合だと求愛の飾りになり、かつ繁殖期には恋敵と戦う武器にもなります。カリブーは氷河期には地球をあちこち歩き回っていました。同じような太古の動物は絶滅しているのにもかかわらずカリブーは北極地方でしぶとく生き残ったのですが、最後の氷河期のときよりもはるかに小型になっています。

カリブーは北極の冬によく適応しています。餌が乏しくなるのを対処するため、食物の摂取量を減らし、代謝率を下げています。ハナゴケをはじめ地衣類がカリブーの最も重要な冬の食べ物となります。カリブーは年々冬の生活圏を移して、できるだけ密集しないようにしています。大雪や氷の状態によっては食べ物があるところまで掘り下げることができないため、その場合には積雪の少ない樹上に多く地衣類の生えた森林地帯で越冬します。

 

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カリブーは樹木限界の北限と北極海との間を絶えず歩き回っているため、「北の放浪者」と呼ばれています。カリブーはユーラシアや北米両大陸のツンドラおよび北方針葉樹林帯に、またグリーンランドや北方の大きな島々に生息しています。ベーリンジア内ではヤク‐アーティア東部、アナジリ山地、およびアラスカ西部の多くの地域に住んでいますが、トナカイがとって替わったチュクチ半島やスアード半島の大部分には分布していません。カリブーは時には広い境界線を越えてヨーロッパないしアジアの北方の多くの島々にまで旅しています。シベリアのいくつかの島々は本土から海に向かって率いられたカリブーの(歩くのも困難な)雪の踏み分け道をたどって、発見されました。

 

■ジャコウウシ(Msuk Ox)

●体長:オス2~2.5m、メス1.9~2m ●体重:オス263~650kg、メス280~295kg
●分布エリア:カナダ、デンマーク、アラスカ、スヴァールバル諸島
●エサ:植物食、草木や葉など
●寿命:12~20年
●学名:Ovibos moschatus

 

ジャコウウシ/Quark Expeditions

北極地方の厳しい環境条件に適応するという点では、ジャコウウシは同地域で高度に特化した動物の一つです。ツンドラと極地砂漠の両方で生き延びており、その分布が北極地方に限られている唯一の反芻動物です。ジャコウウシは1万~1万2千年前にシベリア北極で繁殖しましたが、気候変動と新石器時代の漁師たちによりこの生息地から絶滅させられてしまいました。そもそもそれほど夥しい数ではなかったのですが、アラスカのノース・スロープでは1850~60年までに狩りつくされ絶滅してしまいました。カナダの個体数も乱獲により減少しました。

現在分布しているのはカナダ本土の北極ツンドラとカナダ北極の島々の大部分ですが、バフィン島には生息していません。ジャコウウシは主として平均年間積雪量が50cm以下の地域に分布しています。これらは今なおピアリー・ランド(北緯83°)から、スコールズビ湾(北緯70°)にいたるグリーンランド北東部沿岸では唯一の大型陸生草食動物となっています。ジャコウウシはまたグリーンランド西部にも広がっていきました。また、1935年にはベーリング海のヌ二バク島にもたらされ、そこで繁殖しました。これらの群れの代表種が北東アラスカのバーター島に移され、カビク川付近で放たれました。放たれたジャコウウシは散らばって、新しい群れが成長しました。今日ではジャコウウシはブルックス山脈北方のサドルロチト川の川岸およびカニング=タマヤリアク川とジャゴ=オケロホビク川の流域に生息しています。

ジャコウウシ/Heritage Expeditions

夏には、ジャコウウシは自分たちが好きな食料種の豊富さと成長段階によって植物の種類を選び、休息と採食を交互に行って日々を過ごします。それに対して、冬は雪が生息地の選択に影響を及ぼします。この動物はその移動を抑制し、活動も控えめなので、エネルギーの消耗は最小となりエサ漁りの欲求も抑制されます。繁殖は鈍く、隔年で1産1子を産みますが、植物が豊富な地域では毎年子を産むこともあります。