南極大陸の保護

地球上最大の原生地である南極。この無垢な大地の姿を未来永劫に受け継ぐことが我々の使命です。

多くの政府や民間の機関、南極地域への旅行を手掛ける探検会社は共に手を携えて、南極大陸の壮大な景観、貴重な野生生物、比べようもない広大な未開の地を保護し現在のままの無垢な姿を次世代に受け継ごうと努力してきました。

このような壊れやすく特異な環境を持つ南極大陸への探検旅行は常に環境に責任を持つ方法で運営されています。クォーク・エクスペディションズ社をはじめ南極旅行を手掛ける探検会社が加入している国際南極ツアー・オペレーター協会(IAATO)では、南極大陸の活動に対し厳しい行動規範を設け、南極を目指す観光客の皆様に自発的に従っていただける様ご案内してまいりました。IAATO加盟会社によって実施されてきたこの行動規範は多くの方々のご賛同を受け、南極条約のガイドラインとして採択されるようになったのです。

国際的に承認を受けたこのガイドラインは南極大陸を訪れる全ての人々に適用されます。すなわち南極クルーズをはじめとする探検旅行の団体及び個人旅行者はいうまでもなく、政府から派遣された研究を目的とする科学者、およびその支援要員を含む全ての人々はこのガイドラインを遵守する義務があります。

ガイドラインの主要な条項は多くの国々の国内法にも反映されている為、これに違反した場合は罰金或いは、禁固刑を含む法的制裁が科せられることもあり得ます。

エクスペディション・チームのリーダー及びスタッフはガイドラインを熟知しており、南極クルーズに参加される皆様にガイドラインの内容をお伝えして皆様に従っていただけるよう最大の努力を惜しみません。どうか一緒に参加された方々にも環境を意識した行動をお取りいただくようお勧めください。そしてこの美しい南極大陸が次世代の人々に無垢の姿のまま受け継がれますようにご協力のほどよろしくお願いいたします。

 
南極を訪れる人への手引き

南極での活動は南極条約体系と称される1959年の南極条約および関連協定によって規制されています。この条約では南極大陸を平和と科学の地域であると規定しています。

1991年、南極条約協議国会議は「環境保護に関する南極条約議定書」を採択し、その中で南極を自然保護区に指定しました。この議定書は環境についての基本方針、手続き、南極環境とそれに関連する生態系の包括的保護に関する義務を細かく規定しています。協議国会議はこの議定書の条項を可能な限り各国の法体系に遵拠して適用されるべきことに意見の一致をみております。本議定書は1998年11月に批准されました。

「環境保護に関する南極条約議定書」は旅行者、旅行業者、非政府関連活動を含む南極条約を批准した各国の全ての活動に対して適用されます。そうした人々の行動が南極の環境及びその学術的価値や美観を損ねる事が無いようにする為です。

この「南極を訪れる人の手引き」は訪問者の皆様が一人残らず南極条約とその議定書について知り、その規定を遵守できるように企図されたものです。訪問者の皆様は南極活動に適用される自国の法律や規則を遵守しなければなりません。

 

 

南極の野生生物を保護しましょう

南極の野生生物を捕まえたり、害を及ぼしたりする行動は固く禁じられております。但し、関連国家発行の特別許可証を所持した場合のみを例外といたします。

■飛行機、船、小型船舶等の交通手段を用いて海や陸の野生生物の生態をおびやかしてはなりません。

■鳥類やアザラシの習性が変化してしまう程のやり方で餌を与えたり、触ったり、取り扱ったりしてはいけません。また、近づいたり、写真を撮ったりする場合も同様です。動物が餌を食べているときや換羽、脱皮している時は特に注意してください。

■コケに覆われた広大な平原や地衣類で覆われた岩場の斜面を歩いたり、ドライブしたり、車から降りて歩いたりする時は植物を傷めないように十分に注意をしてください。

■銃や爆薬は使わないでください。騒音は常に最小限に抑え、大きな声で話したり、突然叫んだりして野生動物を驚かさないようにしてください。

■南極固有種ではない家禽、ペットの犬や猫などの動植物は絶対持ち込まないでください。

 

保護区を尊重しましょう

南極大陸ではさまざまな地域が生態学、科学、歴史、その他の分野で特別な価値を有している為、保護が加えられています。それらの保護区においては関連国家発行の許可証が無ければ立ち入る事ができません。史跡、遺跡、その他特別指定地域やその付近では特定の制限を受けます。

■どこの場所が特別保護や制限を加えられている地域なのか、また、入場や活動が許されているのは何処なのかを事前に知っておくことが大事です。

■適用される制限を守りましょう。

■史跡、遺跡、遺物に傷をつけたり、持ち去ったり、破損したりしないでください。

 

科学研究を尊重しましょう

科学研究、施設、設備の妨害をしないでください。

■南極の科学施設や援施設を訪問する場合は事前に許可を取り、到着の24~72時間前に手配の再確認を行い、また関連規則を守るようにしてください。

■科学機器や標識柱の妨害をしたり、持ち去ったり、あるいは実験研究基地や野外調査キャンプまたは補給品を荒らしたりしないでください。

 

安全に配慮しましょう

南極の過酷で予測不可能な天候不順に対応する為に、適切な衣服や装備を整える事が不可欠です。南極の環境は、時に訪問者に快適ではなく、予想がつかないものであり、常に危険な要素が潜んでいる事をご承知おきください。

■南極の過酷な気象や地形などの条件の元で、ご自分に何が出来るか、何が出来ないかの能力の限界を事前に熟知して、常にそれを念頭に入れて、何をなすにも安全第一で行動してください。

■陸上でも海上でも野生生物たちからは安全な距離を置いて観察する様にしましょう。

■エクスペディション・リーダーやスタッフの指示や助言に耳を傾け、グループから離れて一人で行動する様な事はしないでください。

■事前に安全が確認されない氷河や雪に覆われた地面を、適切な装具なしに歩かない様にしてください。雪や氷の下には表面からは見えないクレバスがある事があり、命が危険に晒される場合もあるからです。

■万一災害に遭ってもレスキュー隊が駆け付ける事を期待しないでください。

綿密な計画、適切で充分な装備、熟練したリーダーの付き添いがあってこそはじめて安全な旅行が達成されるのです。

■確実に緊急性を要する場合を除いて緊急避難用シェルターにみだりに足を踏み入れないでください。万一遭難をしかけてシェルターに保管されている緊急食料や装具を使った場合は、遭難の危険が去った後で必ず近くの基地や各国の関係機関に通知してください。

■建物の内外では絶対に「禁煙」をお守りください。火災事故は南極の様に乾燥した地域では想像以上に大きな被害をもたらします。火気の取り扱いには充分にご注意ください。

 

南極大陸の歴史的遺産

南極大陸で一番古い建物は1899年にボルヒグレヴィンク探検隊によって建てられた2棟の探検小屋です。他にも1901年から1941年にかけてのいわゆる「英雄の時代」に建てられた探検小屋がいくつかあります。これらは全て貴重な史跡に指定されており、訪問者には厳しい規則が適用されます。アデア岬、ハット岬、エバンス岬、ロイド岬の探検小屋を訪問される際は通常、南極ヘリテージ・トラストまたはニュージーランド南極計画局により指定されたガイドの付き添いが必要になります。これらの探検小屋の保存及び修繕は民間事前団体である南極ヘリテージ・トラストによって行われております。人類の貴重な財産であるこれらの史跡の保存・修繕にご寄付をいただける方は下記まで書面にてお申し出いただければ幸いです。

 

The Administrator
New Zealand Antarctica Heritage Trust, P.O.Box 14-091,
Christchurch Airport, New Zealand
Tel: +64-(0)-3-358-0200 Fax:+64-(0)-3-358-0211
 

デニソン岬史跡(モーソン小屋)を訪れる際は公式訪問者ガイドラインに従わなければなりません。公認ガイドの同行も必須ですが小屋の内部に入る事は禁止されています。詳細をお知りになりたい方は下記までご連絡ください。

 

The Australian Antarctic Division, Channel Highway, Kingston,
Tasmania 7054, Australia
Tel: +61 (0) 02-323-280 Fax:+61 (0) 02-323-288
 

 南極大陸のその他の場所にある廃棄された探険小屋や、避難所、補給所は上記のものより起源が新しいものですが、やはり重要な歴史的意義を有しています。
通常は関係各国が責任をもって保全に務めているのですが、これらの維持に力をつくしている民間慈善団体が英国に設立されました。英国南極ヘリテージ・トラストです。その主要目的はニュージーランドの南極ヘリテージ・トラストを支援してスコット小屋やシャクルトン小屋を保存することと、南極半島地区に二箇所ある初期の英国科学観測基地を保全することにあります。お問い合わせ、寄付は下記まで。

 
The United Kingdom (UK) Antarctic Heritage Trust, Kingcoed Farm,
USK Gwent, NP15 1DS, UK Tel: +44(0)-1291-690305
 
 
南極のけがれない自然をお守りください!

南極は今までのところ地球上で最も大きな未開の地として比較的、汚染される事なく、無垢な姿を保っています。未だ人類が大挙して押し寄せる事も無く、手付かずの自然がそのまま残っていると言えるでしょう。未来永劫にその姿を留める事が出来るかどうかは私たちの心がけ次第だと言えます。

■上陸する場合は絶対にゴミや不用品を捨てたりしないでください。野外の焚火は禁止されています。

■湖や川を汚染しない様に。海への廃棄物は適切に処理されなければなりません。

■岩や建物に名前を書いたり、落書きをしたりしないでください。

■試験用として生物や鉱物などを拾って持ち帰ったり、先人が残した工芸品などをお土産として持ち帰ったりしないでください。すなわち、岩、骨、卵、化石、建造物の一部や建物内に置かれた物を絶対に持ち帰らないこと。

■住居として使用されているか、廃棄されているか、無人であるかに関わらず建造物を損傷したり荒らしたりしないでください。緊急避難用シェルターも同様です。