野生生物観察に関する一般的原則

 

横たわっているアザラシを観察する場合

陸地、石、氷上で横たわっているアザラシは、ボートや人間の存在に敏感である。人間が出す音や匂い、そして人間を見ただけで反応することがある。アザラシが動揺していることを示す行動に注意すること。動揺を示す行動は以下のとおりだが、これらに限定されるものではない。

●危機感又は警戒を強める行動。頭を回転させることを含む。

●寝そべった状態から身体を持ち上げる。

●接近する船舶から急いで離れる。

●口を開けて威嚇する(あくびと似ている)。

●こちらに向かって威嚇してみせたり、脅かそうとする。

基本的に、アザラシに頭を持ち上げる以外の反応をさせるような行為は避けること。

 

横たわっているアザラシを観察する場合の一般的なガイドライン

●横たわっているアザラシからは、5~10m(15~30フィート)以上離れて観察すること。

●アザラシの観察中、特に母親と子供を囲んだり、分離したりしてはならない。アザラシから見える片側からのみ観察すること。

●海岸ではアザラシと海の間に入らないようにし、アザラシの上流側を歩くこと。横たわっているアザラシの視界を妨げたり、見降ろしたりせずに、姿勢を低く保つこと。

●母親が摂食中、子供のアザラシはしばしば放っておかれる。これらの子供は母親に見捨てられているわけではない。そのままにしておき、触れてはならない。

●解説、会話そしてエンジン音を最小限に抑え、ラジオのボリュームは下げておくこと。

●1頭のアザラシ又は群れのアザラシが水に向かって移動、あるいは数頭のアザラシが急いで水に入る行動が見られた場合、静かに、そして慎重にアザラシから離れること。

●オットセイやアシカは陸上において非常に活発であるため、接近し過ぎた場合には攻撃(噛みつく場合もある)してくることがある。

●草むらの中の動物に注意すること。運営事業者の職員が杖又はそれに代わる物を持ち、先導のすることが望ましい。

 

海鳥を観察する場合

鳥類の近くでの船舶及びゾディアック船の運航について:

見事な海鳥の大群は、時として沖合で見られることがある。たくさんの鳥が水面上で摂食、潜水又は単に休んでいるか、水浴びをしている。これらの鳥の多くは、子供たちに与える餌を求めて、何百、何千マイルという距離を飛行してきていると思われる。

●水の中にいる鳥と衝突しないよう、船舶の速度を落とす、及び/又は、経路を変更するなど、注意を払うこと。

●観察は、鳥の群れの隅から行うこと。

船は、鳥の群れから100m/328フィート離すこと。

小型船とゾディアック船は30m/98フィート離すこと。

●海鳥の中でもペンギン等は、上陸する場所やコロニー近くでのゾディアック船の運転に動揺する場合がある。

●上陸場所やコロニーに近づいたり、それらの場所から離れたりする場合には、混乱を最小限に抑えるため、ゆっくりと行うこと。

●鳥が海への出入口としている場所、水浴びしている場合、コロニーの近くで摂食している場合、船の運転を避けること。

●職員/乗組員は、上陸場所を慎重に選ぶこと。上陸場所は、鳥から可能な限り離れた場所が望ましい。鳥が陸地付近で、羽根の生え変えを行っている場合は、上陸場所の選定に特に注意を払う必要がある。

●泳いでいるペンギンがゾディアック船のデッキに乗り上げる場合がある。このような場合、搭乗者は、ペンギンが船の縁を見つけ、自主的に海に戻るのを静かに待つこと。通常、ペンギンを手助けする必要はない。

●いかなる場合においても餌まきをしてはならない(魚の内臓又は油を海に投げ入れる行為を含む)。

 

陸地での海鳥の観察について:

親鳥が巣に戻ることができないと、トウゾクカモメやカモメによって卵やヒナ鳥が略奪される危険性が高まる。また、親鳥は巣へ戻る途中で人為的な障害物を避けることに貴重なエネルギーを費やしたり、巣への最短距離から外れたりしてしまうことがある。

●動物を観察するとき、乗客にできるだけ座って観察するよう促すこと。また、歩くときにはゆっくりと歩くこと。

●コロニーの通路や海への出入口を塞がないようにすること。

●草むらの中では、鳥の巣が土の中にある場合があり、その出入口は木の葉や枝によって隠されている場合があるので注意すること。

●ヒナ鳥や巣を守るために、トウゾクカモメ又はアジサシは空から急降下し、水中に飛び込んで見せる。この場合、来た方向に後退すること。卵やヒナ鳥は、上手にカモフラージュされていて見つけられないことがあるので、注意が必要である。

 

望ましい接近距離:

●巣作りをする海鳥からは、通常5~10m/16~33フィート離れること。

●サウスジョージア島において、巣作り中のアホウドリからは10m/16フィート、そしてディスプレイ※1 中のアホウドリからは25m/82フィート離れて観察すること。

●巣作り中のオオフルマカモメの場合、横並び又は上流側から、できるだけ25~50m/82~164フィート離れて観察すること。

※1:誇示行動

 

動物が釣り道具に絡まったり、座礁したりしている場合

●釣り道具等に動物が絡まった場合は、可能な限り助けをしてやること。なお、このような動物を助けるときには、経験のあるスタッフ/乗組員のみが行うこと。その際、アザラシのかみ傷などは病気の原因となりやすいので、注意が必要である。

●絡まった状態の動物の写真を撮り、IAATOに報告書を送付すること。

●動物を助けることができない場合、地理的な位置(緯度と経度の座標を示すこと)、種類、絡まり方の状況を記録すること。かかる事態が発生した場合には、経験のある乗組員を乗せた別の船舶が助けに駆け付けられるよう、すみやかに報告をすること。

●死んでいる(浮いている)動物及び(浜辺に)座礁しているクジラ類については記録を残し、IAATOに報告すること。可能であれば、動物の頭の写真(種類の識別のため)を前と横から撮ること。大きさがわかるように、何か比較できる物(例えば、物差し又はゾディアック船の櫂)を写真に差しこむこと。動物の個体の識別(例えば、写真による個体識別を利用)ができるように、動物の腐敗の進み次第によって、尾びれ(尻尾)と背びれ(もし現存していれば)の写真も撮ること。

 

動物の識別確認及びデータ収集

現場の緯度と経度、動物の種類、その他のあらゆる情報は、大きな価値があるといえる。特に写真が含まれていれば尚更である。このような記録は、IAATOの iaato@iaato.org に送ること。

 

役立つヒント!

●エンジンによる汚染を抑えよう。野生動物と近距離で接近するときには、どんな場合においても、正常に作動するエンジンを使用することで、空気と水の汚染を最小限に抑えることができる。これは、小型船やゾディアック船については、特に重要なポイントである。

●偏光レンズを使用したサングラスを用いることで、水面下の、部分的に水中に潜っている海洋動物や海鳥が、とてもよく見えるようになる。

●海洋動物や海鳥の観察には、双眼鏡を使うことを勧める。

 

推奨フィールドガイド

Whales, Dolphins and Other Marine Mammals of the World by Shirihai and Jarrett 2006

Birds of Chile, Antarctica and Southern Argentina by Jaramillo, Burke and Beadle 2003

A Complete Guide to Antarctic Wildlife by Shirihai and Jarrett 2002

National Audubon Guide to Marine Mammals of the World by Folkiens et al. 2002

Seabirds: A Photographic Guide by Peter Harrison, 1987

これらのガイドは、the Sea Mammal Research Unit, Getty Marine Laboratory, University of St. Andrew.によって推奨されたものである。

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ガイドライン2007年修正