エレファント島(Elephant Island)
南緯61°17’ 西経55°13′

エレファント島はサウスシェトランド諸島の一つですが、他の島々から遠く離れた北の端にあります。ウェッデル海の渦巻き海流に乗って氷山や流氷群が押し寄せ、ドレーク海峡のうねりや荒波もむき出しの高い崖に打ち寄せる事が多いため、上陸できる条件が揃うのは稀です。

エレファント島

島の名前の正確な由来は定かではありませんが、1812年頃にはオットセイ猟師達の間でゾウアザラシがよく見られる故と言われていました。

長さ43km、幅21kmのこの島はエンデュアランス号に乗ったアーネスト・シャクルトン卿(イギリス)と隊員達がウェッデル海で船を失った挙句、海氷上キャンプ生活を続け、15ヵ月後にやっとたどり着いた陸地がこの島だったという事で知られています。

スウェーデンから1905年に独立したばかりの新興国家ノルウェーのローアル・アムンセンが大英帝国のロバート・F・スコットより35日早く1911年12月14日に南極点に到達した後、大英帝国の目標は南極大陸横断でした。シャクルトン率いる本隊がウェッデル海側から極点を経由し、ロス海側からの分隊が設置した物資をたどりながらロス海の英基地まで到達するという壮大な試みでした。

第一次世界大戦が始まったばかりの1915年1月、ウェッデル海沿岸の上陸予定地から僅か60海里手前で海氷に閉じ込められてしまったエンデュアランス号は氷と共に北へ約10ヶ月も流されたあげく、氷の圧力で沈没してしまいます(1915年11月)。その後さらに氷上キャンプを約5ヶ月続けたシャクルトン隊がたどり着いたのがエレファント島でした(1916年4月)。

ところがエレファント島は当時の捕鯨船航路から大きく外れているため、そのままでは救助は期待できません。そこで副隊長のフランク・ワイルドら22名が島北岸のポイント・ワイルドで生存をかけて苦闘する一方、シャクルトン他5名は救助を求めて、補強した捕鯨用ボート、ジェームス・ケアード号で1,300km余り離れたサウスジョージア島に向かいます。

冬の近づく荒海の中を16日間かけてたどり着いた6名の内シャクルトン等3名はさらに36時間かけて人跡未踏の島を横断してストロムネス捕鯨基地にたどり着きました。そして、4度目の試みでついにエレファント島に残した全員を救助したのでした(1916年8月)。なお、ロス海補給部隊は3人を失っています。

ストロムネス捕鯨基地

島の南端にあるケープ・ルックアウト(見張り岬)は240mもの崖を背にした狭い磯で、上陸が非常に難しいこの島としては比較的容易です。

切り立った崖と氷河を背景にミナミゾウアザラシ、ウェッデルアザラシ、ナンキョクオットセイなどが狭い海岸に寝そべり、ヒゲペンギン、ゼンツーペンギン、マカロニペンギン、などの小規模な営巣が見られます。  

 

◆エレファント島で見られる動物達◆

ⒸRlindblad20190112