■ザトウクジラ(Humpback Whale )

●体長:15~19m ●体重:34~35トン(最大53トン)
●分布エリア:世界の海洋、熱帯・亜熱帯で繁殖。大西洋、太平洋、北極海、ベーリング海、南氷洋など。
●エサ:オキアミなど浮遊性の小甲殻類や魚
●寿命:77年
●学名:Megaptera novaeangliae

 

ザトウクジラ/Quark Expeditions

ザトウクジラはナガスクジラ科でも他のクジラとは異なった属です。全般的な生態は他のクジラ類とほぼ同様ですが、いわゆるクジラ型という流線型の体型を備えてはいません。

特徴のある体型と習性で大型のザトウクジラはすぐに見分けることができます。体色は基本的に黒か暗灰色で喉元や尾ヒレの下側の表面、体全長の3分の1もある胸ヒレの下側は白い色をしています。ザトウクジラの豪快で騒々しい噴気は独特で、小さいながら肉質のコブの上にある背ビレも特徴的です。頭と顎は肉質のコブが多く付き、体にはよくフジツボなどの甲殻類が付着しています。

 

ザトウクジラ/Quark Expeditions

ザトウクジラはしばしば完全に空中に跳ねあがり、ものすごい水しぶきをあげて背面から着水します。水面に躍り出るほか、その巨大な胸ヒレを揺すって、まるで砲声のような大きな音をたてながら水面を叩き、潜るときは必ずその大きな尾を水上に振り上げてみせます。驚くようなアクロバットやエネルギッシュな泳法を見せるので、幸運にもその姿に遭遇した人々に興奮と歓喜を与えてくれます。

通常、南海の海で採食する時は海面近くで餌に突進するか、獲物がいる海中の下から浮上します。ザトウクジラは長く哀調に満ちた様々な調子の鳴き声をあげながら互いに通信し合うことで有名ですが、近年その鳴き声について研究がなされつつあります。今日その個体数は他のヒゲクジラ同様著しく激減していますが、南極水域、特に南極半島周辺では定期的に小さな群れを見る事があります。

 

■クロミンククジラ(Antarctic Minke Whale )

●体長:8~10m ●体重:6~8トン(最大で9トン)
●分布エリア:北大西洋及び南半球
●エサ:オキアミや小魚
●寿命:60年
●学名:Balaenoptera bonaerensis

ナガスクジラ類で一番小型なのがミンククジラです。鼻先が細く尖っている点がよく目立ちます。体色は背中が濃い青みがかった灰色で、腹の部分が薄い灰色です。胸ヒレの上から青白い模様が背中まで伸びています。体のかなり後ろに大きな背びれがあります。

水面に出る直前に息を吐き始めているためミンククジラの噴気はあまり目立ちません。よくブリーチング(跳躍)をすることがあり、一度跳ね上がると2、3度続ける習性があります。船に近づいて船底の下を端から端まで潜るという一風変わった習性も持っています。ミンククジラは一般に沿岸や流氷の間で見られます。ミンククジラは泳ぎが速く、オキアミが獲れないところではよく小さく群れている魚やイカを食べます。餌を食べるときは無我夢中の様子になり、激しくしぶきをあげながら飛んだり跳ねたり夢中で食べまくります。

 

 

■ナガスクジラ(Fin Whale )

●体長:27m ●体重:40~90トン
●分布エリア:全海洋
●エサ:オキアミ、カタクチイワシ、ポラック、イカ
●寿命:80~90年
●学名:Balaenoptera physalus

ナガスクジラはクジラ目の中では二番目に大きなクジラです。大型種で目立つⅤ字型の背びれを持っているので比較的簡単に見分けがつきます。背びれから尾にかけて隆起した部分があって、このため“razorback”(剃刀のように尖った背)の別名を持っています。背中は黒または褐色で腹面は白または明るい色と対照的な明暗がついている点でナガスクジラ科の中でも類を見ません。よく見ると色は左右対称ではなく、頭の右側から右下唇にかけては青白く、逆に頭の左側から左下唇にかけては黒っぽくなっています。オキアミを食べる際に右側に体を傾けて小さな円を描いて泳ぎます。そのために青白い右側部分が下側になりカモフラージュされるのです。最大速度が約18ノットと大型クジラの中では最も速い泳ぎの名手です。ナガスクジラの噴気(潮吹き)は垂直で非常に高く、時には水のはるか上に身体をジャンプさせます。他のクジラに比べて動きが素早いため、当初は捕鯨船から容易に逃れられたのですが、捕鯨に高速のキャッチャーボートが導入されると乱獲されてしまいました。他の種同様現在では保護下に入っていますが、個体数の状況についてはほとんど情報が入っていません。

 

■シャチ(Killer Whale )

●体長:オス6~9.5m メス5~7m ●体重:オス4~5トン、メス1.4~3.5トン
●分布エリア:世界中の海に分布
●エサ:魚、海鳥、イカ、ペンギン、アザラシ、小型のクジラ
●寿命:50~60年
●学名:Orcinus orca

シャチはオルカとも呼ばれ、イルカの中では最大で、クジラ目の中で一番簡単に見分けられる種類です。シャチは中型の大きさで、頭部が丸くずんぐりした体をしています。体の大部分がつやのある黒で、腹部は対照的にくっきりとした白で脇腹まで続いています。眼のすぐ後ろにパッチがあり、背びれの後ろには灰色の鞍(くら)状の模様があります。一番目立った特徴は、巨大な背びれが、クジラ目の中で最も長く尖っています。成長したオスはこの背びれが真っ直ぐ上に向いて2m近くにもなりますが、メスや若いオスの背びれは曲がっていてサメの背びれのような形をしています。

シャチは通常5~20頭の群れ(複合家族)で移動します。この集団は団結力が高く、獲物を捕るときや他のクジラの面倒をみるときなどはお互いによく協力し合います。シャチは非常に貪欲でイカやサメ、エイ、魚、海鳥、アザラシ、さらには他のクジラも食べます。大型のクジラがシャチの群れに襲われることもあり、まるでヘラジカを襲う狼の群れのようです。しばしば南極を航行する船上からシャチを見かける事がありますが、シャチが船を見る進路を変更して近寄りしげしげと観察する様子を見せることもあります。また獲物を探す為に立ち泳ぎをしながら水面に頭を出す事もあります。

 

シャチ/ANTARCTICA XXI