■ナンキョクオットセイ(Antarctic Fur Seal )

●体長:1.5~2m ●体重:オス200kg、メス50kg
●分布エリア:南極大陸の沿岸部、サウスジョージア島、ニュージーランド南島に生息
●エサ:オキアミ、魚、イカ、ペンギンを捕食する事も多々ある。
●寿命:15~20年
●学名:Arctocephalus gazelle

 

ナンキョクオットセイ/Quark Expeditions

背中はオリーブグレーから銀色で、首と肩にある粗毛は厚いたてがみとなっており、オスは年をとると頭部に鳥冠が生えます。メスはたてがみも鳥冠もなく、胸や喉は雄より薄いクリーム色をしています。

安全な浜辺の近くの岩場の海岸線を好み、オスは9月から10月に浜辺にやってきて即座に縄張りを設けます。非常に好戦的で、他のオスから縄張りを維持・防衛するために度々、争いを続けます。オスは数十頭のメスを囲い、ハーレムを形成します。前年に交尾した妊娠中のメスは11月の終わり頃から浜辺に現れ、通常2~4日で子供を産みます。

ナンキョクオットセイは50mほど潜って主にオキアミを食べていますが、魚、イカ、さらにペンギンも捕食する事も多々あります。冬の間は暖かい水域に移動し、個体分布は北のニュージーランド南島にまで及んでいます。

1820年代初めにナンキョクオットセイの英名Fur Seal(毛皮アザラシ)が表わすように、極めて繊細で密に生えた断熱効果の良い毛皮のために乱獲され、ほとんど絶滅しかけました。その後、保護政策も寄与して、個体数は飛躍的に増加し、サウスオークニー諸島、サウスサンドイッチ諸島、サウスシェトランド諸島といった他の場所でも再び繁殖が始まり、今日サウスジョージア島には推定300万頭以上のオットセイが生息しております。

 

■ヒョウアザラシ(Leopard Seal )

●体長:オス3m、メス3.6m ●体重:オス300kg、メス500kg
●分布エリア:南極大陸周辺、サウスジョージア島やマッコリー島などの亜南極
●エサ:他のアザラシ、ペンギン、魚、オキアミ
●寿命:オス23年、メス26年
●学名:Hydrurga leptonyx

 

ヒョウアザラシ/Quark Expeditions

ヒョウアザラシは獰猛な捕食者です。南極にいるアザラシで温血動物を捕食するのはこの種類だけです。獲物の中には繁殖中のペンギンが高い割合を占めていますが、他のアザラシの幼獣、魚、オキアミなども食べます。ヒョウアザラシの臼歯はカニクイアザラシに似たいくつもの凹凸があり、全く同様に海水のオキアミを漉して食べるのに最適です。

メスがほんの少しだけオスより大きいことを除けば雌雄はほぼ同型です。背中の暗い灰色が腹にかけて次第に薄くなり、豹のような斑点が混じっているのが特徴です。ヒョウアザラシの体型は長くしなやかで蛇のようだといわれ非常に大きく強力な頭と自在に動く首を持っています。

他のアザラシのようにかわいらしさはありませんが、獰猛だといわれる割には挑発されない限り人を襲うことは滅多にありません。ヒョウアザラシは群れを作らない動物で同じ海域に2頭以上いるの非常に稀です。夏の間は流氷の周辺でよく見かけますが、大きなペンギンの営巣地近くの海中には獲物を求めて泳いでいるヒョウアザラシが必ずいると思って間違いありません。水に出入りするペンギンに不意打ちをかけたり、猛スピードで追いかけて捕まえたりします。そして肉から羽の付いた皮膚や骨を取り除くために獲物を振り回し水面にたたきつけます。

他のアザラシと同様に流氷上で出産し子供を育てます。子供は11月から12月にかけて生まれ約2ヶ月で離乳します。

 

■カニクイアザラシ( Crabeater Seal)

●体長:2.7m ●体重:227kg
●分布エリア:南極半島、ロス海、南極大陸周辺
●エサ:オキアミ、軟体動物、魚類、名前に反しカニは食べない
●寿命:30~36年
●学名:Lobodon carcinophagus

 

カニクイアザラシ/Quark Expeditions

カニクイアザラシは世界で最も個体数が多いアザラシで、推定で約3千万~7千万頭いると言われてます。更にここ数十年間は南極海域のクジラの減少に伴って以前より多量の餌が行き渡るようになったため、個体数が増え続けているようです。名前とは異なり、カニクイアザラシはカニではなくオキアミだけを餌にしています。

成獣は雌雄ともほぼ同じ大きさの中型のアザラシです。長くほっそりとした体型で、クリーム色の毛皮から白アザラシと呼ばれる事もあります。尖った犬のような鼻をしていて、天気の良い日には流氷の上にいるのをよく見かけます。多くの成獣の脇や腹にはヒョウアザラシや、シャチに襲われたと思われる古傷がハッキリ見ることができます。

カニクイアザラシの歯はオキアミを食べるのに適していて、上下の歯とも凹凸がたくさん出来ていて、顎を閉じた時に漉し器の役割を果たします。これでオキアミを含んだ海水を口いっぱいに含み、舌をつかって水を押し出してオキアミだけを残すことができます。ヒゲで海水を濾過しながらオキアミを食べるヒゲクジラの食べ方と似た環境適応のひとつです。

9月中旬から11月初旬にかけて他のカニクイアザラシと1kmも距離をとりながら、メスは流氷上で出産します。子供は誕生後約1ヶ月で離乳し、海に入りますが、たちまち天敵であるヒョウアザラシの攻撃を受けてしまうこともあります。カニクイアザラシは主として拡張したり後退したりする流氷群の縁辺に棲んでいますが、開水面を必要とします。

 

■ウェッデルアザラシ(Weddell Seal )

●体長:3m ●体重:400kg
●分布エリア:南極域の氷の下
●エサ:魚、オキアミ、イカ、ミナミタラ
●寿命:30年
●学名:Leptonychotes weddellii

 

ウェッデルアザラシ/Quark-Expeditions

ウェッデルアザラシは地球上で最も南に生息するアザラシで、南緯78度の海域でも繁殖しています。最南端に生息する哺乳動物と言われています。年中陸地が見える範囲内にいますが、しばしば遠くまで出かける事があり、サウスジョージア島、サウスオークニー諸島、フォークランド諸島をはじめ、ケルゲレン島、ハード島、南オーストラリアやニュージーランドでも見かける事があります。

ウェッデルアザラシは、ずんぐりした体型をしていて、体色は背中の部分が暗い灰色で、腹部は次第に淡くなる灰色、全身が明るい色の斑点と縞模様で覆われています。顔は小さいですが、目は氷の下の深く暗い水中でもよく見えるよう極端に大きくなっています。冬の間は定着氷に開けられた穴から海に出入りし、呼吸と餌を得ています。ウェッデルアザラシは潜水が巧みで、600m近くも潜り、1時間以上も水中に潜ったままでいられます。

主食は大半が魚ですがイカやオキアミも大量に食べます。好物は約70kgにもなる大型のミナミタラです。

繁殖期はメスが9月の始めに定着氷に到着し、1~2日後に出産する事から始まります。この時期、オスは接近してくる他のオスを追い散らし、メスは全力で子供を守ります。子供は誕生後6週間位で体重が4倍の120kg以上になった頃に離乳します。この時期、メスの体重は136kgも減っています。子供は生れるとすぐに水に入りますが、何頭かは割れた海氷に押し潰されて死んでしまいます。生後2ヶ月間の死亡率は50%にもなると推定されています。

 

■ミナミゾウアザラシ(Southern Elephant Seal )

●体長:オス6m、メス3.6m ●体重:オス4トン、メス1トン
●分布エリア:南極沿岸周辺
●エサ:イカ、魚
●寿命:22年
●学名:Mirounga leonina

 

ミナミゾウアザラシ/Quark Expeditions

ミナミゾウアザラシは亜南極の殆ど全域にわたる島々に生息しているだけでなく、南極大陸のいくつかの沿岸地域にも生息している大型哺乳動物です。世界最大のアザラシと言われ、北極のセイウチを上回ります。

オスの成獣は巨体と膨らます事が出来る大きい鼻が特徴で、濃い灰色の体色をしています。メスは茶帯びた色で鼻は大きくありません。オスは8月末に海岸に現れ縄張りを確立し、数週間後に現れるメスの到着を待ちます。オスは50頭位のメスがいるハーレムの縄張りを守る間に何度も他のオスから挑戦を受けます。

母親がハーレム海岸に到着して約1週間後に幼獣(体長1.5m、体重36kg)が生まれます。母親は3~4週間しか授乳しませんが、子供の体重は1日に平均約9kg増え続けます。繁殖期中はオスが縄張りを守ろうとして動き回る際、その巨体で子供を押し潰すことが多く、子供の死亡率は高くなっています。幼獣は離乳すると海に餌を食べに行く両親に置いていかれます。約2週間後に浜辺に戻った親たちは換毛期の1ヶ月間ほどの間、泥の窪みで群れて過します。浜辺にぎっしりと密集した巨大なゾウアザラシの群れの眺めと匂いは、まさに壮観です。

餌はイカを主食とし、時に魚も食べます。深さ約1,000m、時間にして30分以上も深く海に潜って捕まえます。

オットセイが1820年代にほぼ絶滅してから、アザラシ猟業者たちはゾウアザラシに目を向けました。彼らの皮下脂肪から燃料用オイルを精製する為でした。巨大なオスのゾウアザラシ1頭から約400リットルの高品質の油がとれました。オットセイの乱獲が繰り返され、19世紀半ばまでにはゾウアザラシもほぼ絶滅に近くなり、アザラシ漁は終わりを告げました。

しかし個体数が回復すると1910年頃には再びサウスジョージア島でゾウアザラシ猟が始まり若干の捕獲規制が図られましたが、1965年に最終的に止めるまで商業捕獲が続けられました。幸い生息数は順調に回復し、ゾウアザラシたちは再び昔からの生息地で数多く見かけられるようになりました。