このように、皆既日食では様々な光景が楽しめますが、写真好きの人はそのような素晴らしい光景を何とか写真に残したくなると思います。日食写真には、狙う対象ごとに色々な撮り方があり、詳しく知りたい方は文末の資料を参考にしていただければと思います。

 

2009年7月22日北硫黄島沖 コロナ

 皆既日食の被写体には、360度の夕焼けというような超広角レンズ向きの撮影対象から、コロナの微細構造のような望遠鏡を使って撮影する対象まで、様々な被写体があります。そのため、あれこれ狙いたくなりますが、皆既継続時間は非常に短いので、初めての方は欲張りすぎずに、眼で眺めて楽しむ時間も十分確保できる撮影計画を立てるようにしてください。2つぐらいに絞り込むとしたら、皆既日食の雰囲気を記録する広角撮影と、コロナの姿をアップで記録するのが一般的ですので、この2つについて簡単に紹介しておきます。

 まず、皆既日食の雰囲気を記録する広角撮影は、図11のように地上風景とともに夕焼けのような空とコロナを一緒に撮るスタイルです。今回の南極日食では、太陽高度は15度前後ですから、フルサイズ換算で24~35mmぐらいの広角レンズで、コロナから地上風景までをバランスよく収めることができます。皆既中の空は、日没後30分ぐらいの暗さになり、ISO400ならF4で1/15秒ぐらいが適正露出になります。スタビライザー付きのレンズなら手持ちでも何とかブレずに写せる限界ぐらいなので、できれば三脚を使いたいところです。

 

図11 2013ウガンダ皆既日食の皆既中の光景(太陽高度18度)

 コロナの詳細を写したい場合は、最低200mmぐらいの望遠レンズ、できれば500mm以上の焦点距離の望遠鏡を使いたいところです。ただ、船上で日食観測を行う場合は船の揺れの影響で、長焦点レンズではコロナを画面内に捉えるのが難しくなるので、短めの焦点距離のレンズを使った方が成功率を高めることにつながります。Jay Anderson さんの2021日食予報サイト(http://eclipsophile.com/2021tse/)によると、皆既帯の中の到達可能部分の大部分の海上では、有効波高(SWH)は平均1.75mから2.5mとのことです。

 コロナを撮る際の露出は、コロナが非常に輝度範囲の広い被写体であるため、適正露出を決めにくく、例えばISO100、F8の場合、1/1000秒から1秒ぐらいまで2段ごとぐらいに露出を振って撮っておくのがおススメです。このような多段階露出を行っておくと、広がり方が異なるコロナの画像を得られ、もし手間を厭わなければ、後日画像処理を行うことで図12のような流線構造を強調した画像に仕上げることも可能です。

 

図12 2012NZ沖皆既日食のコロナ(画像処理でコロナの流線構造を強調)

 あと、南極での撮影ならではの注意点としては、低温によるバッテリーの劣化対策が重要です。日食当日の気温にもよりますが、低温ではカメラの電池の持ちが悪くなるので、肝心の皆既の瞬間にバッテリー切れになってシャッターが切れなかったという事態にならないよう、対策してください。

 

2009年7月22日 コロナ(R-USM処理)

 

文責:日食画像研究会(SEPnet)前代表 塩田 和生

 

日食撮影法の解説記事の例

 

日食のすべて 誠文堂新光社2012           大越治・塩田和生著

 

星ナビ2017年3、4、5、6、7、11、12月号  「日食を撮る①~⑦:塩田和生

 

 

2021年 南極皆既日食のコース詳細はこちら

 

クォーク・エクスペディションズ
 

※11月25日発オーシャン・ダイヤモンドには、「日本語同時通訳」と「日本の天文講師」が乗船予定です。

 

 
ポセイドン・エクスペディションズ