マッコウクジラ（Sperm Whale）

マッコウクジラは、地球上のどの動物よりも大きな頭と脳を持ち、大きな声で鳴くことから、「モビー・ディック／白鯨」の着想を得ました。※アメリカの小説家・ハーマン・メルヴィルの長編小説、白鯨の原題Moby Dick（モビー・ディック）。

 

 

名称：マッコウクジラ（Physeter macrocephalus）

体長：16-20ｍ

体重：40,000-55,000㎏

生息域：亜北極、亜南極、大西洋の海域

保全状況：危急（Vulnerable）

食性：イカがメインですが、魚、タコ、エイ、メガマウスザメ

外見：クジラの体の1/3までを構成する長いブロック状の頭部で、灰色または黒色の皮膚があり、頭部の後ろと側面にしわが寄る傾向があります。短く幅の広いフリッパー、幅の広い三角形の尾びれ、単一の噴気孔。

 

マッコウクジラはどのように狩りをするのですか？

マッコウクジラは通常、1日に900kg強の餌を食べます。獲物（できればダイオウイカ）を見つけるために、300〜1,200mの深さに潜りますが、狩りの最中には2kmもの深さに潜ることもあります。平均的な潜水時間は1時間程度です。

マッコウクジラは、獲物に焦点を合わせるために反響定位を使って、世界で最も大きな動物由来の音である一連のクリック音を発生させます。マッコウクジラの下顎の歯は約18〜20cmで、口蓋の下側にあるソケットに収まっています。マッコウクジラの上の歯は、上あごから伸びることはありません。

マッコウクジラとダイオウイカは天敵であると考えられています。実際に戦闘が行われたことはありませんが、マッコウクジラにはダイオウイカの吸盤でついたと思われる丸い傷跡が残っていることがあります。

マッコウクジラの群れは、小魚を捕獲する際に、餌となる魚を個体よりも食べやすいボール状の塊にするために協力し合うことがあります。

 

マッコウクジラは社会性があるのか？

マッコウクジラのオスは、繁殖していないときは単独で生活しています。しかし、メスのマッコウクジラと仔どもは、最大20頭のメンバーからなる群れに集まります。マッコウクジラのオスは一般的に4歳前後で旅立ち、時には他の若い大人のオスと一緒に自分のポッドを形成することもあります。

このポッドもオスの加齢とともにやがて分裂していきます。マッコウクジラのオスは極地に近い冷たい海域に進出する唯一の種であり、マッコウクジラのメスと仔どもの群れは熱帯や温帯にとどまっています。

マッコウクジラはほとんどの時間を狩りに費やしますが、午後になると社会的な行動をとるために休憩することがあります。このとき、互いに声を掛け合ったり、体をこすり合わせたりします。

攻撃されると、マッコウクジラは「マーガレット隊」を形成し、攻撃者を追い払うために尻尾を外側に突き出して脆弱なポッドメンバーを囲みます。

 

マッコウクジラはどのくらいの速さで泳げるの？

マッコウクジラの通常の巡航速度は時速5〜15キロ程度です。スピードを上げると時速35〜45キロで泳ぎ、このスピードを1時間程度維持できます。

 

マッコウクジラの交尾の儀式はどのようなものなのでしょうか？

マッコウクジラのオスは18歳前後、メスは9歳で性成熟します。オスは交尾の権利を争って、複数のメスと交尾します。マッコウクジラのオスは、他の動物のようにメスとのハーレムを作りません。マッコウクジラの妊娠期間は約15ヶ月で、1頭の仔どもを産みます。

出産は社会的なイベントであり、他のマッコウクジラの群れは出産する母クジラと仔クジラの周りに保護バリアを形成します。マッコウクジラのメスは4〜20年に一度、40歳くらいまで交尾をします。

 

マッコウクジラの寿命は？

マッコウクジラの寿命は人間とほぼ同じで、約70年生きます。オスは50歳くらいにならないと一人前になりません。

 

現在、マッコウクジラは何頭いるのでしょう？

世界的な資源量は不明ですが、おおよそ36万頭と推定されており、マッコウクジラは大型鯨類の中で最も資源量が多い鯨の一つです。

 

マッコウクジラには捕食者がいるのですか？

シャチはマッコウクジラにとって最大の脅威ですが、ゴンドウクジラやオキゴンドウもマッコウクジラを狩ることが知られています。シャチはマッコウクジラの群れ全体を追いかけ、仔クジラやメスさえも捕らえようとしますが、オスのマッコウクジラは一般に大きすぎ、攻撃的なので狩られることはありません。

マッコウクジラには、通常の商品（食料、脂、油）のほかに、捕鯨が盛んだった時代に貴重だった素材があります。

＊スペルマセチ

マッコウクジラ(sperm whale)の頭部から取れる鯨油。様々な医薬品のほか、ろうそく、軟膏、化粧品、耐候性塗料に使用されるワックス状の物質。

＊アンバーグリス

マッコウクジラの体内で作られた結石のことです。その結石を元に動物性香料が作られ、「竜涎香（りゅうぜんこう）」とも呼ばれています。マッコウクジラの消化器官で、イカのくちばしの刺激によってできる、ワックス状の可燃性物質。

マッコウクジラは、消化器官で分解されないものを通過させるために、何年もかけてこれを生成します。アンバーグリスは香水産業で多用されていましたが、その希少性から、やがて他の物質が探されるようになりました。

 

マッコウクジラは人を襲いますか？

マッコウクジラは一般的に船を避けますが、ごくまれに小さなボートに衝突することが知られています。科学者の中には、マッコウクジラが過去の人間の攻撃を覚えていて、敵対的になったと信じている人もいますが、衝突は純粋に偶然であると考える人もいます。

 

マッコウクジラに関する7つの事実

・マッコウクジラは地球上で最も大きな頭と脳を持っています。その脳は人間の5倍も重いです。

・モビー・ディックとあだ名された白鯨は、実在した2頭のマッコウクジラに基づいています。船エセックス号に追突して沈没させたクジラとモカ・ディック名付けられたクジラは、アルビノの個体です。

・マッコウクジラの名前は、体内から取り出した精液のような液体である鯨蝋に由来しています。

・マッコウクジラの糞は、海を漂い植物プランクトンの餌となります。

・マッコウクジラのオスは、ごくたまに、餌を奪い合うためにオルカを襲うことが知られています。

・マッコウクジラの心臓の重さは、平均的な成人男性2人分（125kg）とほぼ同じです。

・これまで動物から記録された最高の音圧レベルは、ノルウェー北部沖のマッコウクジラのものでした。シングルクリックは235（dB re 1 μ Pa）に達し、これは約 1 メートルの距離で聞こえるサターン Vロケットの音圧に相当します。

この録音は、マッコウクジラが音で獲物を気絶させ、あるいは殺すことができるという「ビッグバン仮説」を証明するものでした。

 

【南極旅行／オーシャンワイド南極の手引き】

 

 

 

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