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南極クルーズ・北極クルーズの手引き

環境

環境(Environment)

 

南極の生態系は、生き物達が極地の厳しい環境に適応するために、長い時間をかけ、複雑な進化を遂げた結果造られたものであり、限られた種と生息地が、相互に依存しています。こういった生態系は、外部からの干渉に非常に弱く、特に食物連鎖に影響が及びます。南極の食物連鎖は全ての種の生き物が依存しあっているため、1つの種の変化が、間接的に他の種にも影響が及びます。特にオキアミは生態系全てに関わっており、オキアミの個体数が、他の生き物の個体数に直結しています。

 

南極で行われた最初の大規模な商業活動であるアザラシ猟は、オットセイとゾウアザラシを絶滅寸前まで追い込みました。アザラシ猟の主な狩場の、サウスジョージア島とサウスシェトランド諸島の個体は、数年でほぼ絶滅しました。

1830年ごろになると資源不足のためアザラシ猟は縮小しました。現在ではいくつかの地域で個体数は回復傾向にありますが、元の数には戻っていません。また、生態系のバランスが崩れ、元の個体数を超えてしまった場所もあります。

これは、海中の餌が豊富だったことが考えられます。

 

ゾウアザラシ

 

生態系のバランスが崩れたのは、南極付近の海域で行われた、捕鯨活動の影響だと考えられています。捕鯨は19世紀後半に始まり、1970年以降も続いています。この結果、個体数が元の数の3.5%にまで減少するなど、悲惨な結末をもたらしました。捕鯨団体は利益を追求するため、収益性の高い種や商業的価値の高い種を狙って捕鯨をしていました。その結果、ザトウクジラやシロナガスクジラ、セミクジラの個体数が激減しました。

 

ユニークな生態系を持つ南極ですが、地球の生態系のバランスにも大きな影響を与えており、地球の環境を観察する上で重要な役割を果たしています。例えば、南極海(南大洋)は、世界の3大海(太平洋、大西洋、インド洋)を結ぶ唯一の水域であり、南極海が世界の海の循環に重要な役割を果たしています。また、南極の氷は、南半球の1/10を覆っており、地球の気候や生態系に影響を与えています。また、南極の氷は、地球の気候変動に関する非常に貴重な情報源で、過去の地球の歴史や気候変動、将来の気候動向を研究する事に役立っています。また、現在の地球環境の汚染レベルを測る指標にもなっています。

 

この事から、南極大陸は様々な研究にとって、重要な地であり、自然の実験室として活用されています。現在、気候変動は最も注目されている問題の1つであり、南極は、地球の将来を予想する上で最も重要な場所です。氷は凍結する際、大気の一部を閉じ込めているものがあります。閉じ込められた大気は、過去の地球でどのような気候変動が起きたのかを知る重要な手掛かりとなります。

 

 

現在、地球では各地の氷河の減少が大きな問題になっています。南極でも棚氷の加速や崩壊する兆しが確認されており、ここ数十年で約1万km2の氷が融けたと推定されています。これは、水生生物や海の流れに大きな影響を与え、海水の塩分濃度などを変えてしまう可能性があります。気候変動については、世界中の科学者が議論を続けており、南極での研究の必要性が高まってきています。

 

南極の極端な自然環境に適応した生物は環境の変化に非常に敏感で、南極大陸のこのような環境の変化は、生態系を脅かしています。海水のPH値の変化、水温、塩分濃度の変化などの影響で絶滅の危機に瀕する場合もあります。

 

南極で起きている問題は全て、他の地域でも起こる可能性があり、南極での研究は他の地域の生態系を守るためにも重要です。

 

 

(南極旅行/アンタークティカ21南極ハンドブック10)