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南極クルーズ・北極クルーズの手引き

マッコーリー島

マッコーリー島(オーストラリア領)/Macquarie Island, Australia
マッコーリー島は、タスマニアと南極大陸の中間地点で、南極収束線のすぐ北に位置しています。この小さなオーストラリア領の島全体が完全保護区となっており、別名マッコーリー島自然保護区として知られています。長さ34km、幅5kmの細長い島です。タスマニアから1,400km、南極大陸から1,294kmにあるこの島は、大洋の海底地殻が隆起した稀有な例で、海床拡大と大陸移動の研究にたずさわっている科学者にとっては最も興味を惹かれる場所でもあります。島の地形は急斜面と切り立った断崖に囲まれた長く起伏した台地から成り立っています。植生は主としてスゲと背の高いタソック草を含む草類で樹木は一本も生えていません。一年を通じて寒冷多湿な気候で、強風が吹き荒れます。日照が一番多いのは11月から2月までで、この時期には1日3.5時間ほどの日照が見込まれます。

マッコーリー島は1810年にオットセイ猟船長のフレデリック・ハッセルボローによって発見され、当時のニュー・サウス・ウェールズ知事の名前が付けられたものです。この発見後すぐさま毛皮を求めてオットセイの乱獲が始まりました。その後、油を手に入れるためゾウアザラシ、そしてペンギンまでもが大量に殺戮されました。アザラシやペンギンの絶え間ない商業的乱獲は1919年に最終的に中止されるまで続けられました。この期間にオットセイの1種が、固有種のクイナ、インコなどと共に絶滅してしまいました。その後も多種多様な鳥類や哺乳動物が故意に或いは偶然に島に持ち込まれましたが、現在外来種は徐々に排除されつつあります。野生の猫の駆除は、1998年に達成しましたが、下歯類が急増し、ウサギが広い植生を破壊してしまいました。下歯類の駆除は、2008年のドブネズミ、イエネズミ、ウサギなどから始まりましたが結果はあと数年後になるでしょう。

ダグラス・モーソンは、南極基地と無線電話の中継地を作る為に南極大陸に向かう途中、 1911年にこの島を訪れ、非常に気に入った為、帰国後マッコーリー島を野生生物自然保護区に指定する運動を開始しました。モーソンの夢は1933年に達成され、現在マッコーリー島自然保護区はタスマニアの公園・野生生物・史跡局の管理下に置かれ、オーストラリア政府南極局による兵站の支援を受けています。

モーソン自身も1911年と1930年の2回この島を訪れていますが、他にも有名な南極探検家がこの島を訪れています。1820年にはベリングスハウゼンが、1840年にはチャールズ・ウィルクスが、1901年にはスコットがこの島に来訪しています。(スコットはアザラシ猟師に酒1瓶を送って上陸を許可されたのですが)シャクルトンも同行しています。

豊富な野生生物(Abundant Wildlife)
絶滅の危機に瀕していた野生生物の多くはアザラシ猟業者の乱獲からようやく回復の様相を見せる様になりました。この島には現在推定10万頭のアザラシ類と300~400万羽のペンギン類が生息し、世界で最も多様な野生生物を誇る自然保護区のひとつとなっています。哺乳動物にはミナミゾウアザラシをはじめ、ニュージーランド、南極、亜南極の3種類のオットセイ繁殖群が見られ、ヒョウアザラシやニュージーランドアシカも定期的にこの島を訪れます。またウェッデルアザラシやカニクイアザラシも時たまその姿を見せます。沖合では数種類のクジラを見かけますが、シャチの姿をペンギン・コロニーの近くで見かける事も珍しくありません。少なくとも25種類の繁殖鳥が生息しており、その中には4種類のペンギン(キングペンギン、ゼンツーペンギン、イワトビペンギン、ロイヤルペンギン)、4種類のアホウドリ(ワタリアホウドリ、マユグロアホウドリ、ハイガシラアホウドリ、ハイイロアホウドリ)、8種または、たぶん12種のミズナギドリとクジラドリもいます。この他にもズグロムナジロヒメウ、クロガモ、ナンキョクオオトオゾクカモメ、ミナミオオセグロカモメ、それに少数のナンキョクアジサシも見られます。マッコーリー島はロイヤルペンギンの世界総本部ともいえる場所で推定85万つがいが繁殖していると見られます。

島の北端にあるオーストラリア観測基地(1947年)は、科学者及び支援要員のベース基地で夏期には40人ほどが駐在していますが、冬期にはその数は半減します。航空機用滑走路はなく、交通手段は船のみで訪問者は全て上陸許可証が必要です。遊歩道、展望台、基地とサンディ湾などを結ぶ観察遊歩道があり、それをたどって歩いてゆくと数箇所の見所に容易に行くことが出来ます。サンディ湾にあるキングペンギンとロイヤルペンギンの巨大な集団繁殖地や、オットセイ・アザラシ類、アザラシ猟時代の史跡や遺物などのほか、島の地質学的特徴もなかなか興味深いものです。

(南極旅行&南極クルーズ2-10)