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南極クルーズ・北極クルーズの手引き

潜水

潜水 (Diving)
鰭脚類は時間と深さにおいても驚くべき潜水の名手です。
それは素晴らしい体内機能のなせる業です。スキューバ(自給式潜水用呼吸装置)タンクもエラも持たず鰭脚類は循環器の様々な特性によって、多くの酸素を体内に補充すると共に酸素消費量を少なくしています。
身体の大きさの割に人間よりも多くの血液を持っています。
(人間は体重の約7%が血液ですが、鰭脚類は12%もあります。)
この事は筋肉やその他の内臓に酸素を運ぶヘモグロビンに満ちた赤血球がより多いという事です。さらに、血液中の赤血球の割合もヒトより約30%も多くなっています。

しかし、鰭脚類が酸素を節約するために行っている最も効果的な事は、胃や腸、骨格筋肉、皮膚、ヒレなど潜水に直接関係ない内臓への血管を収縮させて血流を90%も節約している事です。(ヒレは身体の筋肉で操作します)

鰭脚類の心拍数は通常60~120/分ですが一定ではありません。潜水時には心拍数は4~6/分になる事もあります。この状態は除脈と言います。
これはおそらく、十分な血圧を維持しながら潜水に必要ない部分への血流を少なくするためと考えられます。

およそ17㍍以上潜水したダイバーが急速に浮上すると潜水病(窒素酔い=ケーソン病)にかかります。この深さを超えると、水圧で肺の中の空気に含まれる窒素が血液中に溶けますが、浮上するときのように急に減圧されると、融けていた窒素が血液中で泡となります。
炭酸ソーダやシャンペンの瓶からガスが泡となって出る様を想像してください。血液中の窒素の泡は狭い血管を塞いで中枢神経系の働きを妨げ、筋肉や関節の激痛を引き起こし、重傷例では致命的となる事もあります。
唯一の治療法は窒素の泡を再び融解させるべく加圧し、それからゆっくり減圧するしかありません。
ところが、鰭脚類は重力と浮力が安定するように潜水前に排気してから、体内の組織に取り込まれている窒素だけを持って潜るので、スキューバダイバーが深い潜水中に何度も空気を吸い込んで大量の窒素が血液中に融け込むのに比べて体内の窒素の量がはるかに少なくて済むのです。

(北極旅行&北極クルーズ6-59)