南極・北極旅行&クルーズ 株式会社クルーズライフ

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南極クルーズ・北極クルーズの手引き

四季の生活

海氷が厚く凍った冬が海生哺乳類の狩猟の季節でした。
定着氷は一方が陸地に凍りついた海氷で、もう一方は氷が終わる海側で開放水域に接しています(氷縁)。
氷縁はセイウチ、シロイルカ、子供のアザラシを銛や槍で捕まえるのに絶好の場所でした。海氷の厚さが1㍍位になる2月には、アザラシは呼吸用に氷を前足の爪で削って円錐形の穴を開けなくてはならなくなります。
この呼吸用の穴(アグルーAglu)を利用した猟はより独特な伝統的漁法の一つでした。狩人は犬の助けを借りて隠れたアグルーを探し当てて、注意深く上の雪の栓を取り除いて替わりに少量の鳥の産毛を穴の上に置きます。
アザラシが息継ぎのために上がってくるとその産毛がヒラヒラと動くと言う訳です。氷点下の中に何時間もじっと立っていた狩人はすばやく確実にモリを投げて仕留めなければなりません。
直ちにアイスピックで氷の穴を広げて、通常は仲間に助けてもらい、アザラシを引き上げなければなりません。それから、アザラシをキャンプまで引きずっていくのに犬ゾリ隊が重要な役割を果たしました。

春のアザラシ猟(ウトックUtoq)はもっとエキサイティングなものでした。
海氷にひびが入ってアザラシが氷の上で日向ぼっこをするのです。
アザラシが10秒間隔で眠る間に狩人は少しずつ忍び寄って、眼を覚ましている間はアザラシらしいしぐさをして、水中に潜ってしまう前に突進して仕留めました。
晩春から夏にかけては冬の定住地から、魚、カモ、ワモンアザラシなどがたくさんいる場所へと移動する時期でした。
家族総出で、色々な技を使って鳥の卵をたくさん集めました。
ヒモで岩につないだ釣針を埋め込んだ脂身でカモメをおびき出して捕まえました。
飛んでいる鳥を捕らえるには骨又は石の球を両端に付けた投げ縄(ボラBola)を使い、崖に巣をつくるヒメウミスズメには網を使い、カモは抜けてしまわないように柄の途中に返しの付いた特製の投げやりで捕まえました。

カナダのイヌイット族にとって8月の釣りは家族総出の行事でした。
最も好まれたのは、普段は海で生息するが産卵は淡水の川や湖でするホッキョクイワナでした。産卵のために川を遡上する途中で石積みの堰に捕まり、男も女も子供たちも今日と同じように槍で刺して捕まえたのです。
夏のカヤックを使っての猟は特別な装備が必要でした。
トグル(銛の返しとして働く横木)が付いた銛がアザラシやセイウチの体内に撃ちこまれると柄と柄頭が外れて、食い込んだ頭部と銛綱だけが残るようになっていました。獲物が小さい場合はツナを付けたまま手繰り寄せる事が出来ましたが、アゴヒゲアザラシやセイウチなどの重い獲物の時は浮き袋を使って疲れさせる必要がありました。浮きは膨らませたアザラシの胃袋かまるごとのアザラシの皮で牙製のトグルで綱に繋げられていました。

8月末から9月初旬は毛皮の毛足が衣服にするのにちょうどよい長さになるので、カリブー狩猟の最適時期でした。
カリブー狩りは1年中必要に応じて不定期に行われましたが、晩春はウシバエの幼虫のせいで皮が穴だらけになってしまい使い物にならず、冬は毛皮が重すぎて衣服用にはできませんでした。
カリブーの毛の一本一本は中が空洞になっていて断熱効果が抜群なので、パルカにすると軽くて暖かいのです。
秋のカリブー猟の時期は各エスキモー集落が集まって古い親戚と再会したり、若者達が配偶者を選んだりする時期で、特に若者にはワクワクする季節でした。
狩りの前に岩を人の形に(イヌクシュク)に似せて積み上げ、長いV字型になるように並べました。若い男達はV字型の開いた方から閉じた方へ走りながらカリブーを追いたてました。
イヌクシュクの陰では漁師たちが槍や弓矢を持って待ち構えていて、そこを通り過ぎる時に驚いたカリブーを仕留めたのです。

冬至が近くなると宗教的儀式の季節でした。
しばしばみだらな事になりがちなセドナ祭はキリスト教のクリスマスに近い時期だったので初期の宣教師達を仰天させました。

最近では、多くの町や村で伝統活動のいくつかを復活させて色々なお祭りを始めています。冬のアグルー(氷穴)猟コンテスト、イグルー建設競争、犬ゾリレース、カヤックレースなどです。
事実、グリーンランドの高校では1年コースでカヤック、銛の作り方、毛皮縫製などを教えています。
北極の人々にとってこれらの伝統を保存する事はとても大切な事です。

(北極旅行&北極クルーズ4-11)