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南極クルーズ・北極クルーズの手引き

北極の昆虫

分類学上の難しさや、標本の採集や色々な調査のために厳しい自然環境に耐える昆虫学者が不足している事などが原因で北極の昆虫についての具体的な情報はほとんどありません。
しかし、現在の知識でもある程度の一般化は可能です。

北極の昆虫相には温帯をはじめとする他の地域でも共通して見られる種類の昆虫が見られます。しかし、場合によってはそのバランスが若干違っています。
例えば、北米ではコガネムシ類が約33%を占めていますが、北極ではわずか12%です。一方で、ハエ目(カ、ガガンボ、ハエ、アブ、ブユなど)は北極地方では極端に多く、北米で19%なのに比べて北極では53%も占めています。

北極地方内の分布に関しては、高緯度北極ではほとんどの昆虫が全域に分布しています。実際、緯度が高くなるほど周極種の比率が高くなります。
北部北極で顕著な節足動物はドクガ(毒蛾)と2種のクモ(コモリグモとコサラグモ)です。

北極の昆虫数はきわめて多いのですが、特定地域に限定されてもいます。
これらは普通、湿度、断熱性、温度、栄養分、植生、食物等の最適な条件を持つ、極限られた小さな環境(草の茂みや岩の間など)に集まっています。
高緯度北極砂漠の昆虫は小川の流れや池に繁殖や生活基盤を依存しています。
昆虫はまた、フクロウ塚、哺乳動物の巣穴、鳥の巣、脊椎動物の死骸などのような特殊な場所も栄養分に富んだ棲家として利用します。個体数は産卵数減少の原因にもなり得る悪天候や他の動物の増減にも左右されます。例えば、腐肉を食べるクロハエの数は腐肉の主要供給源であるタビネズミの数の変動により変化します。

昆虫は北極の植物の間でも繁殖しています。甲虫、ゾウムシ,ガガンボ、チョウ、ガなどの草食昆虫は一般的に良く見られる昆虫です。
クロバエ、食糞性コガネムシ、カゲロウ、トンボ、イトトンボは亜北極地方で多く見られます。北極にはかなり多彩な昆虫が生息しています。
実際、グリーンランドには26種の蝶や蛾を含む600種類以上の昆虫類がいます。

カとブユは北極の広範囲にいます。これらは湖や池から大量発生します。刺すのはメスだけで、これは産卵率を高めるために脊椎動物の温血を求めているのです。カは人間にとっては特に迷惑ですが、ツンドラで繁殖する鳥にとっては基礎食料になっているのです。
7月半ばか8月になってカがいなくなるとブユ(ブヨ)が北極地域で優位を占めます。ブユは温暖地方のスナバエに関係がある小さくて群生する吸血性のハエです。
ブユは主として亜北極に生息していますが、流れの速い小川で繁殖し、幼虫は淡水魚の重要な食べ物です。
ブユは高緯度北極地域には生息しておらず、カも多くありません。時速80㌔で飛ぶことができるヒツジバエはトナカイ/カリブーの鼻孔に卵を産み付けますが、ウシバエは脚に卵を産みつけます。幼虫が体内で育ち再び皮膚を破って外に出ると、トナカイ/カリブーを衰弱させてしまうと共にその皮革は穴が開いて商品価値がなくなってしまいます。

北極で最も数が多いのは非吸血性のユスリカで、場所によっては昆虫の半数を占めています。ユスリカは生態系の中で重要部分を占め、草食動物、腐食性動物として機能しているほか、他の昆虫や鳥、魚の食べ物となります。種類によっては寿命が6年もあるのもいます。

(北極旅行&北極クルーズ6-38)